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2013年12月28日 (土)

エルフElf

●ファンタジーの顔役
エルフという言葉に「幻想」の雰囲気を重ね合わせる人は多いと言います。今や彼らはドラゴンやゴブリンと並んで、ファンタジーの顔役であり、物語になくてはならない存在となりました。

ゲームや小説などの影響からか、彼らを一箇の種族として捉える向きもありますが、もともとは北欧やゲルマンにおける妖精の総称であり、つまりは「フェアリー」と同じく一般名詞に当たる言葉であったのです。

現在私たちが別の種族として認識し、別の名前で呼んでいる連中……ゴブリンやホブゴブリン、ドワーフ、コボルド(コボルト)、スプリガン、シルキー、ピクシー、ブラウニー、ケルピー、トロールなども、すべて「エルフ」の概念に含まれる存在でありました。
いま彼らとエルフが別と考えられているのは、あくまでも近年の区別によるものにほかなりません。


●エルフのルーツ
エルフという名前がどこから来ているのかはよく分かっていません。
チュートン語(古代ノルウェー語)の「妖精」を意味する「アールヴァー」「アールヴ」から来ているとする説が有力ですが、他にもラテン語の「白」を意味する「アルブス」、同じく「山」を意味する「アルベス」(※アルプス山脈の語源?)、北欧古語の「水」を意味する「エルフ」などが語源として考えられています。

北欧神話によれば、エルフは明るいエルフ(リョース・アールヴァー/ライト・エルフ)と暗いエルフ(デック・アールヴァー/ダーク・エルフ)に分かれると言います。

「明るいエルフ」は妖精界(アルヴヘイム、エルフェイム)に棲み、光と空の属性を持つ存在です。月下で金髪をくしけずり、自由に空を飛び、「白妖精」という名前を持っています。
一方、「暗いエルフ」は地底や人間の家のそばに棲み、闇と地の属性を持つ存在です。「白妖精」に対比して「黒妖精」と呼ばれることもあります。

「白」「黒」と言っても、あくまでも棲む場所や外見による区別によるもので、どちらが「善」で、どちらが「悪」とか、そういった区別はありません。強いて言うならどちらも「中立」。良い部分もあれば悪い部分もある……そんな感じです。

ただ、醜いモノをできるだけ自分たちとは縁遠いところに置いておきたいのは今も昔も変わらないようで、次第に「黒妖精」は、人間に敵対する巨人の一族であると考えられるようになりました。


●エルフのいたずら
今からはあまり想像もつきませんが、エルフと言えばかつては「イタズラ者」の代名詞でもありました。英和辞典によれば、今も「エルフelf」という言葉には「腕白小僧」「いたずらっ子」という意味があります。

彼らのイタズラはちょっと手が込んでいるのが普通で、多くの場合「エルフ・ショットelf shot」という見えない矢を射かけます。この矢に当たると足腰がしびれたり、突然生命を失ったりすると言うからかなり恐ろしいシロモノです。別名「フェアリー・ストロークfairy stroke」「エルフ・ダートelf dart」などとも言います。

恐らくは、脳血栓やヘルニアなど、かつて原因不明とされた病気の原因を、こうした妖精たちのイタズラに帰したのではのではないかと推測されます。弓矢の形をしているのは、イギリス各地でよく見られるやじり型の石を、妖精たちの放った矢の痕跡だと考えたところから来るものです。

その他にも、エルフの名を冠したものはいくつかあって、例えば「エルフ・サイトelf sight」は今で言う千里眼。「エルフ・ダンスelf dance」はエルフたちの踊り場です。エルフ・ダンスは草が円形に生えているのですぐに見つけることができます。
この踊り場に足を踏み入れた者は突然目が見えなくなったり、奇妙な病気に襲われたりするので、見つけても絶対に近寄ってはならない、とされました。


●エルフのイメージ
妖精や妖怪にさまざまなタイプが存在するように、エルフも、地方によってさまざまなタイプが存在します。
例えば、イギリス南部のイングランド地方では、群れをなす小妖精と考えられましたし、逆に北部のスコットランドでは人間大の大きさと考えられました。前者のイメージはシェイクスピアの考えた小妖精パックに、後者のイメージは「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」のエルフ像に、それぞれ昇華します。

今でこそエルフは美形・痩身・不老……など良い印象の言葉で語られるようになっておりますが、実はこうしたイメージはつい最近になってできたもので、中世どころか20世紀に入るまでは、どちらかと言えば悪い印象の方が強かったのです(この辺は日本の妖怪に似ています)。

姿も美形・不老どころか、老人の姿を持つ者あり、醜悪な姿を取る者あり、奇妙奇天烈摩訶不思議……なる外見の者あり。まるっきり怪物、あるいは宇宙人みたいな風貌で描かれることも多かったようです。

中世スコットランドの民謡には次のようなフレーズが残っています。ここでは「エルフ」の呼称がいわゆる「蔑称」みたいなかたちで使われています。

「インプ」「エルフ」と呼ぶなら気をつけて。
「フェアリー」と呼ぶなら、いろいろ邪魔をしてあげましょう。
「素敵なお嬢さん」と呼ぶなら、あなたの良きお嬢さんに。
「素敵なシーリー(妖精)」と呼ぶなら、
昼も夜も、良いお友達になりましょう。

こうしたイメージが一転したのは、トールキンが「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」などの中で、エルフを貴族的な雰囲気を持つ種族と描いてからです。
この設定はのちに「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(D&D)」「ソード・ワールド」などの作品へと受け継がれ、エルフ像のスタンダードとなります。


●エルフと人間の見分け方
エルフの中には人間そっくりの姿を取る者もいます。そうした連中と人間を見分ける方法については、昔から「エルフは身体のどこかに人間ではない部分を持っている」というのがありました。

例えば、デンマークのエルフである「エレウーマン」はニワトコの木の精なので、背中がうろのようにぽっかりと空いています。だから、彼らは人間たちと踊ることがあっても、決して背中を見せる真似はしません。

スカンジナビア半島のエルフ「ハルダーフォルク(隠れた人)」は上から下まで人間そっくりですが、ただ一つ、「牛の尻尾を持っている」というところだけが違います。

あるハルダー・フォルクの女性がダンス・パーティに参加していたとき、ふとしたことからその尻尾がスカートの裾からはみ出してしまったことがありました。しかし、とある親切な若者が、そっと彼女に「靴下止めが出ていますよ」と注意したお陰で、周りに妖精とバレずに済みました。
くだんの若者は、そのお礼に一生幸福な生活を送ることができたということです。


●エルフの長い耳
エルフと言えば長い耳を思い浮かべる人は多いようです。「長耳族」と書いて「エルフ」と読ませる漫画家もいます。
彼らが長い耳を持つに至った理由について、動物の擬人化などの影響を考える人もいるようですが、どちらかと言えばアメリカ映画の影響の方が強いようです。彼の国では、「スタートレック」のスポック博士のように、亜人種に限らず、人間以外の知的生命体について耳を長く描く傾向があります。
それを、RPGリプレイ「ロードス島戦記」のイラストを手がけた出渕裕氏が、何を誤解したか、フェネックフォックスのような巨大な耳に描いたことから、日本では横に張り出した大きな耳のタイプが主流になったと言われています。



●亜種・別名など
アル/アルフ/アールヴァ/エルヴィン/アルプ/エルヴス/エルファ/フェアリー/シー(アイルランド地方の呼び名)/ムリアン(コーンウォール地方)/タルウィス・ティグ(スコットランド地方)/ウィーフォーク(ウェールズ地方)/エレウーマン/ハルダーフォルク/海エルフ/山エルフ

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