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2013年12月28日 (土)

コボルド(コボルト)Kobold

●ゲルマン生まれの妖精
コボルド(コボルト)は中世ドイツの伝承に登場する、子供っぽい姿の妖精です。

名前の由来はゴブリンと同じくギリシア語の「子供」を意味するコバロスKobalosから来ているとも、ドイツ語で「部屋の精」を意味するコーベンホルトKobenholdから来ているとも言われ、要するにあまりよく分かっていないわけですが、いずれにしても、子供と縁の深い存在であるということは間違いありません。

伝承によれば、彼らは赤い帽子に緑の服、金色の髪といういでたちで現れます。あるいは素肌に赤いコートだけという場合もあるようです。

その帽子の色から「赤い帽子」すなわち「レッドキャップ」なる名前で呼ばれることもありますが、イギリスでは「レッドキャップ」と言えば人殺しをする悪いボガート(妖魔)の名前です。
彼らは夜な夜な犠牲者を求めて彷徨い、その血で帽子を赤黒く染めていきます。


●人間とともに暮らす妖精
この妖精たちは常に人間の側に寄り添って暮らしています。
基本的にイタズラ好きではありますが、ゴブリンほどの悪辣さはありません。状況によっては人間の手助けも行いますし、善意には善意でキッチリ返すような義理堅さもあります。
むしろゴブリンと言うよりは、ケルト(ヨーロッパ北西部)の「ブラウニー」や「シルキー」に近い存在と言えるかも知れません。

彼らは家だけでなく、人間たちが働く鉱山などにも出現します。通路をうろつき回っては、コーン、コーンと何かを叩くような不思議な音を立てるので、しばしば「叩く者」を意味するノッカーKnockerの名前で呼ばれることもあるようです。
鉱夫たちは、この不思議な音が聞こえたらすぐに避難しなければなりません。なぜなら、必ず直後に落盤とか異常出水、あるいは爆発などの大災害が起こるからです。

実際、坑道などで変な音が聞こえる時は、例えば近くを大量の地下水が通っているとか、地盤がゆるんでいるとか、いずれにしても人間たちのすぐ側に危険が迫っていることが多いのです。
昔の人々は、こうした「危険の前兆」を、妖精という分かりやすい形に仮託して、子供たちや後世の人々に伝えようとしたのかも知れません。


●妖精の金属
彼らには変わった習性があります。それは、鉱山から銀を盗み出し、代わりに粗悪な金属を置いてゆくというものです。鉱夫たちはこの金属を妖精の名前にちなみ、「コボルド」と呼びました。現在の「コバルトCobalt」です。

実際、コバルト鉱(方コバルト鉱)と銀鉱(硫銀鉱)は非常に質感が似ていて、素人にはほとんど区別がつかないと言います。
そのため、慣れていない人間が銀と間違えてコバルトの方をつかまされ、後でがっくりする……ということも多かったようです。

コバルトの厄介なところは、価値が銀より著しく落ちるというだけではなく、「毒」が含まれていることがある、という点です。

精製前のコバルト鉱にはしばしば砒素分が混じっていて、精製時に中毒を起こす例が後を絶ちませんでした。砒素は和歌山カレー事件でもお馴染みの、大量に服用すれば死ぬこともある、極めつきの猛毒です。
さらに、銀へ触れると黒く変色するという性質があります。ゆえに、価値がない上に、銀と迂闊に混ぜるとシルバーの輝きが失われてしまうこの怖い石を、危険な「妖精石(コボルド石)」と呼んでひどく恐れました。

ちなみに、この物質が銀とはまったく別の元素であることが確認できたのは、中世を過ぎてかなり経ったころの18世紀になってからです。
現在では医療用の放射性元素、あるいは顔料「コバルトブルー」の原料としてさまざまな使われ方をしており、「本物の」銀に劣らぬ活躍ぶりを見せています。


●エンターテイメント作品に見るコボルド
ところで、この妖精はゲームや小説ではどのように扱われているのでしょう。局所的な妖精だからあまり知名度は高くないのではないか……と思ったらさにあらず、意外にもその活躍の場はかなり広いようです。
その背景には、「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(D&D)」と言ったゲームの「やられ役」として登場し、プレイヤーにとってかなり身近な存在になっていたことも影響しているようです。

ゲームに登場する彼らは、姑息で臆病、腕力もないし頭も弱いのですが、繁殖力は抜群で、だいたい数十から数百のオーダーで出現し、その手法は常に力押しです。要するに人海戦術しかできない存在です。
爪などに毒を持つとする作品があるのは、コボルド石(コバルト鉱)には毒が含まれることからの連想でありましょう。

彼らの外見として、イヌもしくはジャッカルの頭を持つとするものが多いのも、大きな特徴です。中世のコボルド伝承にイヌもしくはジャッカルとの積極的な関連性を示すものがない以上、これが「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(D&D)」などのゲームによる一方的な設定であることは明白です。
知名度と引き替えに本来の姿を失った典型的な例と言えましょう。



●亜種・別名など
ブルー・キャップ/レッド・キャップ/コブラナイ/コボルド/プッカ/ゴブラン/コボルド・ロード(コボルド貴族)/コボルド・シャーマン(魔法コボルド)

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