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2013年12月28日 (土)

オークOrc/Ork

●トールキンの怪物
オークは豚顔(もしくは醜い顔)を持つヒューマノイド(人間型知性体)の一種です。
ゲーム、小説、マンガなど、ありとあらゆる作品に登場する活躍を見せながら、なぜか中世以前の伝承にはまったく登場しません。それもそのはず、20世紀にとある作家の手によって生み出された、まったく新しい怪物であるからです。

英米比較文学の権威としても知られるオックスフォード大学言語学教授J・R・R・トールキン。彼が子供たちのために書いた「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」や「ホビットの冒険」と言った一連のシリーズ。その中で、冥王サウロンに連なる存在として、悪の限りを尽くしていたのがオークたちでありました。


●中つ国のゴブリンたち
トールキン自身の語るところによれば、オークとはホビット語(主人公たちの言葉)で「ゴブリン」を意味する言葉だそうです。

もともとは美しい種族エルフの仲間であったのですが、メルコール(モルゴス)という冥王がおびただしい数のエルフを地下世界に連行し、ひどい拷問を加えました。その結果、相当な数のエルフが苦痛と憎悪によって「堕落」し、醜いオークになり果てたのだと言います。

そうして生まれたオークは、あの美しいエルフとは同じだったとは思えないほど醜くなり果てました。
腰は曲がり、脚は弓なりになり、背は低く縮み、手は南方のサルのように長く伸びました。血は黒く冷たく、皮膚は「焼けた皮膚のように」真っ黒で、鼻孔も顔ものっぺりと扁平型です。口からは黄色く光る牙と分厚くて真っ赤な下が覗き、目は「炭が熱く燃えさかるが如く」に赤くギラギラしています。

醜悪なのは外見ばかりでなく、性格もそれに比して悪くなりました。酷薄で残虐、身勝手で貪欲。自分の利益のためならば、仲間でさえも平気で裏切る、文字通りの「卑劣漢」です。

彼らは太陽の光に大変弱く、日なたに身をさらすと衰弱するか焼け死にます。
サウロンはその辺りを改良して「ウルク・ハイ(ホブゴブリン、ハイ・オーク)」と言うオークの上位種を作りました。「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」で主人公の仲間ピピンとメリーを誘拐したのも、このウルク・ハイです。

歴史上(小説内の歴史という意味です、念のため)では冥王メルコールが滅した後、ぷつりとその姿を消します。
しかし、いなくなったわけではなく、地下に潜っていただけで、メルコールの配下であったサウロンが新しい冥王の座につくと、再び姿を現して彼の尖兵として働くようになりました。


●オークの由来
オークの名前の由来については、よく解っていません。トールキン自身がその話題に触れることを極度に嫌っていたためです。ただ、ローマ神話にオルクスという冥界をつかさどる神があり、それが起源ではないかと現在では考えられています。

オルクスはギリシア神話の冥界神ハーデスに当たる存在で、メデューサらゴルゴン3姉妹の父でもある神です。古代バビロニアの女神ポルキスとも深く関わっていると言われ、主に豚が生け贄へと捧げられました。その流れから、中世には豚顔と黒い羽を持つ悪魔とされることもあったと言います。


●ゲームのオーク
この怪物は、オリジナル系(非フォークロア系)としては珍しく、いろんな作品に登場します。
もとの作品からして悪役専門なので、イメージ的に敵役として使いやすいと言うのもあるのでしょうが、一番の理由は、現代のファンタジー作品に多大な影響を与えたゲーム「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(D&D)」に、この怪物が正式採用されたことによるものと思われます。
もっとも、最近の作品のイラストなどを見ると、豚顔と言うよりは「サル」に近い感じになっているようですが……。

ゲームに登場する彼らは多くの場合、力も頭も弱いやられ役です。
その分を旺盛な繁殖力で補い、人間の前に登場する場合は必ず数人から数十人というオーダーです。人間と交配することもでき、生まれた子供は「ハーフ・オーク」と呼ばれ、人間からもオークからも疎まれる存在となります。


●オークのモチーフ
オークのイメージについては、あくまでも噂レベルの域を出ませんが、「黄色人種か黒人をモチーフにした」という話もあるようです。確かにこれらの人種は鼻が低く、繁殖力が(欧米人)に較べ強くて、肌も明らかに濃い色をしています。

トールキンが「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」を書いた20世紀前半と言う時代は、実は有色人種に対する偏見が最も強かった時代でもあり、黄色人種の進出を脅威とする「黄禍論」が話題を呼んだのもこのころです。
トールキンも、もしかするとこうしたイメージを頭にオークの姿を描いたのかも知れません。もっとも、作者の名誉のために言えば、彼自身はこうした噂をキッパリと否定しています。



●亜種・別名など
ウルク・ハイ/ハイ・オーク/オーク・シャーマン(魔法オーク)/オーク・ロード(貴族オーク)/ハーフ・オーク

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