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2014年1月30日 (木)

フェアリーFairy

●概念としてのフェアリー
フェアリーという呼称ほど、広い概念を差すものもありません。エルフやホブゴブリンなどの人間に近い妖精はもとより、ピクシーやスプライトなどの有翼種、ブラウニーやホビットなどの小人、ゴブリンやコボルドなどの妖魔、ニンフやドライアドなどの精霊、果ては小型の神々、幽霊、想念体……ありとあらゆる存在をその中に含んでいると言っても過言ではありません。
それをすべて網羅しようとすれば分厚い本が何冊もできてしまうことでしょう。


●妖精を差す言葉
一般に「妖精」というくくりで語られることの多い彼らではありますが、地域別に見るとそれぞれ特色があります。

北欧のフェアリーは「トロール」や「エルフ」などの名前で呼ばれます。さまざまな姿や属性を持ちますが、多くの連中は人間と深く関わり合って暮らしており、良くも悪くも「人間界ずれ」しているのが特徴です。ブラウニーやシルキーなどもこの北欧系に入ります。

ケルト系(ヨーロッパ北西部)のフェアリーは「シーSidh/Shee」もしくは「シーオークSheoques」などの呼び名が使われます。

シーとは本来「土の塚」「丘」を差す言葉でしたが、次第にその下に棲む不思議な連中を差す名前として使われるようになりました。この「シー」を使った妖精と言えば、まずはじめに泣き女妖精「バンシー」の名前が挙げられます。
「バン」はケルトの言葉で「女性」、そしてシーが妖精を意味するので、直訳すると「女妖精」になります。同様に芸術家に取り憑くリャノン・シー(ラナン・シー/妖精の恋人)、ダーナ神族の末裔であるディーナ・シー(ダーナの妖精)といった連中の名前にも「シー」という言葉が使われます。

ギリシア神話系は棲む場所や風習によって個々に独自の名前を持っているのが普通です。
例えば木の精であればドライアド、水の妖精であればネレイデス、といったように。まとめて呼ぶのであれば「ニンフNymph」(ギリシア語で「ニュムペー」)という呼称を使います。
このニンフは「精霊」とも訳されます。なお、特定の属性を持たないニンフの中でも、物語上重要な役割を果たす者については、「スキュラ」や「エコー」「キルケー」などのように個人名を与えられることもあります。


●フェアリーという言葉
フェアリーという言葉そのものについては中世から使われるようになりました。もともとはギリシア語のペリperi、もしくはラテン語の「神託」「運命」を著すファトゥムPatum/Fatumから来ていると考えられています。
それが、動詞形の「魔法をかける」という意味のファタエfatae/ファタレfatareとなり、それがさらに英語圏へ入って「フェイ」「フェ」と変わりました。この「フェイ(フェ)」という言葉にも「妖精」という意味があって、アーサー王の義姉モルガン・ル・フェイの名前もその「フェイ」に由来しています。

さらに、そのフェイによって魔法をかけられる状態を「フェイの魔法にかかった状態」――すなわち「フェイ・エリーFay-erie」と呼ぶようになりました。

「フェアリー」という呼称は、この「フェイ・エリー」がなまったものです。本来は文字通り、魔法にかかった状態を差していたのですが、次第に、魔法を使う不思議な存在そのものを差すようになりました。


●妖精のルーツ
妖精がいつから存在し、どのように形づくられてきたのかについては、今も大きな謎と言われておりまして、気鋭の学者の間で研究が進められています。
おおむね原始宗教や偶像崇拝、神話、民間伝承、英雄伝説、その他もろもろ……のいろんな伝承神話が複雑に絡み合って生まれたものであることは確かなようです。ウィル・オー・ザ・ウィスプなどのように、自然現象から誕生したと考えられる「妖精」の例もいくつかあります。

また、地域によっては妖精のようなものが存在しない場所もかつてはありました。妖精学者トマス・キートリー(カイトリー)によれば、ケルト地方(北西ヨーロッパ)にはもともと妖精は存在せず、ゲルマン(ドイツ~北欧)にあったものが、キリスト教の伝播とともにこの地方へ伝えられたのだと言います。

妖精の発祥については、キリスト教では次のように説明されています。

もともと彼らは天界に棲んでいる天使だったのですが、悪事を行ったかどで追放されたか、もしくは次なる楽園を求めて自分から出て行きました。その中の一部は、天に背いたことをひどく後悔し、いつか昔のすみかへ戻りたいと思ってはいるものの、戻るには邪悪すぎ、かといって地獄へ堕ちるには善良すぎるので、仕方なく妖精界や人間界で暮らし、最後の帰還チャンスである「最後の審判」の日を待っていると言います。
彼らが時折人間の前に姿を現すのは、自分たちが本当に天へ帰る資格があるか、それとなく人間たちへ尋ねるためなのだそうです


●妖精の身体と性格
性格的には、イタズラ好きの面ばかりがクローズアップされがちですが、義理や人情を大切にする、けっこう古風な面もそなえていて、特に特に、自分たちへ善行を施し、助力を与えてくれる者にはプレゼントをくれることさえあります。
そのプレゼントは、金銭や宝物の場合もあれば、「動物と話のできる頭巾」といった不思議なアイテムの場合もあり、時に「幸運」そのものを与えてくれる場合もあります。

そんな性格の彼らですから、もちろん自分たちへ害を与える者には容赦しません。大事なものを盗んだり、住処を荒らしたりすると、文字通り末代まで祟るような恐ろしい罰を与えてくることがあります。


●妖精の生活
彼らの生活は人間と大きく違っています。食べ物はほとんど取らず、おおむね草花や食物のエッセンスだけを吸って生きています。
エッセンスとは万物に含まれる「オーラ」みたいなものです。このエッセンスを吸い取られたものは、栄養価はそのままですが、急速に色つやを失ったり、味が悪くなったりします。

彼らが忌み嫌うものは鉄、腐った水、人間の汚水、塩水、そして聖書、聖水、ニワトリ、蹄鉄などです。
特に蹄鉄は聖なる金属である「鉄」と、やはり聖なる形である「三日月型」の組み合わせであるので、妖精に対し特に強い効果を発揮します。扉などに打ち付けておけば、彼らはそれ以上入ってくることができません。ちなみに、彼らの姿を見たいときは「四つ葉のクローバー」を頭に載せると良いと良いそうです。


●妖精の外見
妖精の外見は伝承によってそれぞれ違います。
北欧系は人間大の大きさが多く、逆にケルト地域(北西ヨーロッパ)はウスバカゲロウのような羽を持ったピクシータイプが主流です。大きさも北欧のトロールのように「アリのような大きさしかない」ものもあれば、ケルト民話に出てくる「スプリガン」のように巨人として描かれることもあります。
変身と解除を繰り返すごとに、少しずつ霊質が削られてどんどん小さくなる、という説もあります。いずれにしても、標準より大きな身体を持つ者は、たいてい妖精の中でも王のような地位にあると思っていいでしょう。

妖精学者によれば、彼らの身体は「凝縮した雲のよう」だと言います。
自由自在に大きさ、幅、体格などを変えることができ、やろうと思えば巨大な怪物の姿を取ることも可能です。しかし、あくまでも重さは元のままなので、それで実際に人間を踏み潰したり……といったようなことはできません。せいぜい魔法でそのように「錯覚」させるのが関の山です。

服装については、裸の場合もあれば、その国々の民族衣装で現れる場合もあり、あまり一定していません。民間伝承では「緑の服に三角帽子」という姿を取ることが多く、童話などもその流れに沿っています。


●妖精の住処(すみか)
妖精の住処は「妖精界(アルフヘイム)」と呼ばれる閉じられた世界です。人間界とは「ラースRath」というもので隔絶されていて、そう簡単に訪れることのできない場所なのですが、ときおり間抜けな人間がその「ラース」から妖精界へと入り込むことがあります。

とある女性が、ラースへ足を踏み入れたところ、妖精たちがダンスを踊っている場面にでくわしました。ムリヤリ輪の中へ引きずり込まれ、何日も踊りを踊らされるハメになり、気がつくと足の爪はすり減ってなくなってしまっていたそうです。

アイルランドでは「妖精界」と言えば「地面の下」が相場です。
この地方では畑を耕すと、やじり型の石が発見されることがあります。先住民の使った武器であるとも言われておりますが、昔の人々はこれを「妖精の矢」と考え、限りない薬効があるものとして大切に保管しました。

妖精界と人間界の時間の経ち方が違うというのもよく聞く話で、妖精界でたった数日過ごしただけなのに、人間界では数百年が経過していたということもありました。
逆に、妖精界で何年も過ごしていたのに、人間界へ戻ってみると数分しか経っていなかった……なんて話もあります。

彼らの世界にとらわれぬようにするには、向こうで食べ物を出されても決してそれを口にしないことです。ちょっとでも呑み込んでしまうと、元の状態で戻ることはきわめて難しくなります。
妖精界に迷い込んだとある人物は、その世界から逃れたい一心で、どんなに食べ物を出されてもガマンし続けました。そのお陰で、彼は見事元の世界に元のままで戻ることができたのだそうです。


●妖精の分類
最後に、妖精の分類方法について紹介いたしましょう。この辺りは学者によってかなり恣意的な区分けがされています。

1.生活単位によるもの(ノーベル賞作家W・B・イェイツによる分類)
◎ひとりで暮らす「ソリタリー」
◎集団で暮らす「トルーピング」

2.生息場所によるもの・その1(キャサリン・ブリッグズによる分類)
◎妖精界に棲む「妖精界の住人」
◎人間の家に棲む「守護妖精」
◎人間界の野外に棲む「自然の妖精」
◎特定の場所に棲む「怪物」

3.生息場所によるもの・その2
◎陸の妖精
◎海の妖精

4.生息場所と容姿によるもの(北欧神話による分類)
◎妖精界に棲む美しい「ライトエルフ(光のエルフ)」
◎地下に棲む醜い「ダークエルフ(闇のエルフ)」

5.性格によるもの
◎温厚な「ホブゴブリン」
◎イタズラ好きな「ゴブリン」
◎人間に敵対する「ボギー」

6.性格によるもの・その2
◎友好的な「シーリーコート」
◎非友好的な「アンシーリーコート」

7.大きさや神々しさによるもの
◎小型の妖精
◎人間と同じくらいの大きさの妖精
◎神々しいオーラをまとう妖精、もしくは英雄的な妖精

8.ゲーム・小説的な分類によるもの
◎人間と敵対しない「エルフ」
◎人間と敵対する「ダークエルフ」(モンスター)



●亜種・別名など
フェイ/フェ/エルフ/ニンフ/シー/シーオーク/妖精/小妖精/パック/レプラコーン/レプラホーン/クルーラーホーン/ファージャルグ/ガンコナー/オベロン/ティタニア

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