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2014年1月30日 (木)

ジャイアントGiant

●大きな人々
自然の脅威や雄大さ、または強い外敵を「何か」の形に仮託し、それに対抗することで、自分たちがいかに無茶なことに対抗してきたかを語る、という手法があります。擬人化などもその一つですが、このようにすると、直接的に「○○をした」と事実を語るよりも、分かりやすい分だけ人々の心に残りやすいと言います。
その「何か」は地方や伝承におって違います、ドラゴンの場合もあれば、オーガー(鬼)や異形の怪物の場合もあります。しかし、とりわけ多かったのが、巨大な人間、すなわち「巨人」の姿になぞらえることでありました。

彼らに関する説話は厖大な数にのぼり、今もその数は増え続けています。単なる英雄譚の登場人物というだけでなく、巨人そのものが主役であったり、巨人から世界が生まれたとする創世神話もいくつか存在します。中世にはオーガーやスプリガン、トロールなどが巨人に設定されました。


●神話の巨人たち
ギリシア神話にはキュクロプス(サイクロプス)、ヘカトンケイル、ティターン神族(タイタン)、ギガース族などの巨人族が登場し、物語の重要な役割を担っています。ちなみに「巨人」を意味する英語「ジャイアントGiant」の語源はギガース族の名から来るものです。怪物のアルゴス、天空神アトラス、そして人間に火を与えたプロメテウスも、やはり人間を大きく越えるサイズに設定されています。

北欧神話はギリシア神話以上に巨人に関する物語にあふれています。
そもそも、世界のはじまりはユミルという巨人の死でありました。彼の身体から、大地や川、妖精や人間たちが生まれたのです。その後も、原初の巨人ヨトゥンをはじめ、霜の巨人フリムスルス、山の巨人ベルグリシ、火の巨人ムスペッル、水の巨人エーギル、ミーミルなどの連中が生まれ、物語に彩りを添えています。


●日本の巨人伝説
日本にも、ダイダラボッチや酒呑童子(しゅてんどうじ)、八郎といった巨人の伝説が残っています。ダイダラボッチはとりわけその中でも最大の大きさを誇ります。何せ富士山に腰かけながら、駿河湾で顔を洗ったと言われるくらいですから。ちなみに、怒って蹴り出した場所に水が溜まったのが現在の琵琶湖、足跡は東京都世田谷区の「代田池」にななりました。「代田(だいた)」の地名もダイダラボッチにちなむものです。

酒呑童子は丹後(京都府北部)の大江山に棲み、人を喰らうと恐れられた存在です。源頼家は豪傑たちを集めて彼を退治しましたが、その中に「金太郎」で有名な坂田金時もいました。
彼もやはり子供のころから熊にまたがり、野の獣と相撲を取るなど、並はずれた体格を持つことで知られます。「八郎」は秋田の男鹿湾をせきとめ「八郎潟」を作った巨人です。


●巨人の象徴するもの
彼らの多くは、単なる想像の産物であったり、自分たちの偉業を誇るために作られた存在でありましたが、中にはあまりに強大な軍事力、知力を持ったがゆえに巨人とされた者もいます。

ケルト(ヨーロッパ北西部)の伝承に出てくるフォモール神族やダナーン神族はその典型的な例です。彼らは、イギリス・アイルランド地方に本拠地を置き、侵略者のローマ帝国に執拗な抵抗を見せたフォモール族、ダナン族といった部族が、その後巨人とされたものです。
その居住地に巨石遺跡がいくつも残っていることも、もしかすると影響しているかも知れません。

他には、さきに触れたアレキサンダー大王や、イギリスのブラン王(祝福のブラン)などが巨人の姿で描かれています。アレキサンダー大王は、その肖像画や伝承を見る限り、決して身体の大きい方というわけではなかったようなのですが、まあそれだけ恐ろしい存在だったと言うことなのでしょう。
中国でも輝かしい功績を残した人物は巨人に描かれる傾向にあり、諸葛孔明は九尺、孔子は何と一丈(十尺)あったなんて書かれています。当時の一尺が20センチ前後だったとしても2メートル前後の身長があったことになり、今の目から見ても大変な偉丈夫です。


●聖書に見る巨人
聖書に出てくる人物も、巨人だったという説があるようです。ヘンリオンという学者によれば、旧約聖書に登場するアダムとイブはそれぞれ121フィート9インチ(39メートル以上)と118フィート9インチ(36メートル以上)だったと言いますので、大変な巨人です。
「方舟」のノアや人類の始祖アブラハムの身長も4メートルから8メートルぐらいあったそうで、彼らも人間の域を超えています。
時代がぐっと下がって、ダビデ王の治世になるとさすがにそういう人たちはいなくなりますが、それでも少年時代のダビデ王と戦ったゴリアテは9フィート9インチあったと言いますから、およそ3メートルで充分巨人の範疇に入ります。



●亜種・別名など
アハッハ/ルージャグ/ジーラッハ/ヨトゥン(霜の巨人族)/山の巨人族/火の巨人族/フォモール族/トゥアハ・デ・ダナン(ダナン族)/キュクロプス/ヘカトンケイル/ティターン/ギガース/アルゴス/フォモール族/フォール

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