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2014年1月30日 (木)

トロールTroll

●北欧の妖精
トロール(トロル、トローとも言う)は、エルフやドワーフと並ぶ、北欧を代表する妖精のひとつです。
「妖精」とは言うものの、フェアリーなどと違って明確なイメージが与えられているわけではなく、地方や伝承によってさまざまな姿が言い伝えられています。巨人であるとするもの、小人であるもの、人間そっくりなもの、長い鼻を持つもの、美しい女性、半人半獣、首を小脇に抱えたデュラハンタイプ、頭が二つあるもの、この上なく美しいもの、逆にこの上なく醜いもの……など、まさに千差万別。場合によっては、隣り合った地域で、まったく別の姿が言い伝えられていることさえあります。

この不定形の存在が、なぜ妖精と見なされたのか、なぜトロールと呼ばれるようになったのかは、よく分かっていません。そもそも「トロール」という言葉の起源すら、諸説あってはっきりしていない状態なのです。一説には「魅惑する」を意味する古代スウェーデン語に由来するとも言われています。

北欧神話では、ラグナロク(神々の黄昏)に太陽を呑み込む大天狼フェンリル(スケル)に「トロル」という名前が与えられていたことがありました。


●イギリスのトロール
シェトランド諸島(イギリス北端部にある島々)のトロールである「トロー」は、人間そっくりの姿をしています。陰気で暗い印象を与え、普段は岩陰に棲み、土をこねて鳥や魚の形に変えて、味や匂いを自らつけて食糧にします。
女性のトローは存在しないため、子供が欲しいときには人間の女性をさらってきて嫁にするのですが、その女性はトローの子供を生むとすぐに死んでしまいます。

トロー自身はと言えば、基本的に子供の間は不死身ですが、大人になるとすぐに死んでしまうので、永遠に子供のままでいるトローもいます。
もっとも、そうしたずる賢い、「トローの風上にも置けない」連中は、早々に群れから追放されてしまうそうですが。


●トロールの性質
多くの場合、トロールは太陽のもとで動き回ることができません。
太陽が顔を覗かせたその瞬間、肌は一瞬で石と化します。もちろん、それで死ぬわけではありませんが、何せ石になっているので、彼らは太陽が沈むまでその場に立ち尽くすしかありません。夜になるとこの石化が解け、再び自由に動き回ることができます。

この設定はJ・R・R・トールキンの「ホビットの冒険」「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」に生かされます。これらの作品においてトロールは恐ろしい怪物としての役割を与えられ、ホビット庄のすぐそば、エリアドールの森に棲み、村人や旅人を何人もその牙にかけます。
ホビットのビルボ一行も彼らに襲われますが、一行の守護者である魔法使いガンダルフによって逆に罠にはめられ、トロールたちは石の身体に変えられてしまいます。


●エンターテイメント作品に見るトロール
ゲームや小説などでは、トールキンの作品以上に、トロールは畏怖すべき、恐ろしい怪物として描かれる傾向にあるようです。
太陽の光に当たると石になるという設定はそのままに、高い再生能力と不死の属性を持ち、武器で傷を与えても、見る間に急速に傷口がふさがっていきます。手足を斬り落としても、斬り落とした部分からまた新しい手足が生えてくるという凄まじさです。
再生を防ぐには、傷口を炎か酸で焼くか、もしくは簡単に復元しないように、ばらばらの切片に刻んで、広い範囲にまき散らすしかありません。


●ムーミントロール
こうした恐ろしい姿に描かれるトロールがいる一方で、まったく害のない、かわいらしい妖精の姿で描かれる場合もあります。
「ムーミン」などはその好例です。彼らも「ムーミントロール」と言う、れっきとしたトロールの仲間なのです。作者のトーベ・ヤンソンは、小さい頃から父親に「台所にはトロールたちがいるんだよ」と言われて過ごしました。その時の空想を絵物語にしたのが、かの有名な「ムーミン」シリーズです。

彼らの風貌は、カバが直立したような印象を与えますが、むろんカバをモチーフにしたものではなく、トロールの特徴である「長い鼻」を作者なりにアレンジしたものだと言われています。背丈も人間のくるぶしほど、5インチ(15センチ)ほどしかありません。


●トロールの起源に関する考察
トロールの伝承は北欧一帯に分布しています。そして、その範囲は、イギリスなど一部を除いて、そのほとんどが夏に太陽の沈まない地域、つまり「白夜」のある地域に集中します。

これらの場所では、しばしば薄明かりの中に、人間のような、そうではないような、不思議な存在が見られることがあります。
その正体は単なる霧であったり、もしくはほのかな光の中で不気味に浮かび上がる木々や岩のシルエットだったりするのですが、今のように充分な科学知識を持たない人々にとっては、それらが不気味な怪物に見えたであろうことは充分に想像がつきます。

もしかすると、こうした目撃例がもととなって、不定形の妖精トロールが作り上げられていったのかも知れません。地域や伝承によって姿かたちがバラバラなのも、景色がはっきり見える日中には姿を現さないのも、それで説明がつきます。



●亜種・別名など
トロル/ムーミントロール(ムーミン)/オログ・ハイ

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