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2014年6月

2014年6月26日 (木)

アミーAmy

●炎の総統
アミーは地獄の大総統にして、地獄王国の王族のひとりです。ソロモン72将にもその名前が見えます。
普段は炎に包まれた身体で、地獄(ハーデース)に棲みますが、召喚されると魅力的な男性の姿で現れます。ただし、その手には長槍と生首を持っています。

人間の魂の生命力と引き替えに、占星術や諸学問を教えますが、その他に良い使用人を提供したり、他の魔神が守っている財宝を暴いてやったりします。
「欺瞞」「裏切り」「悪意」「誹謗(ひぼう)」など、ありとあらゆる悪事をつかさどり、敵陣営に猜疑の種をまいたり、流言飛語を飛ばしたりするのを得意とします。

堕天使や能天使(中級第三位の天使)を従えており、20万年後に天へ帰り、熾天使に戻ることを望んでいると言われています。



●亜種・別名など
アミ

アモンAmon

●地獄の公爵
アモン(アーモン)は地獄の公爵です。40個師団を率いる有力な悪魔であり、地獄の中でもトップクラスの戦闘力を持ちます。
恐らく、彼に真っ向から対抗できるのは、ルシファーやベルゼブブと言った一部の最高幹部ぐらいでしょう。口から炎を吐くので「炎の侯爵」と呼ばれる場合もあるようです。永井豪の漫画「デビルマン」で、主人公・不動明と合体したのもこのアモンでした。

もともとはエジプトの至高神アメンにルーツを持つ神であったと考えられています。本来は水神か風神みたいな性質を持つ神で、一時はギリシア神話の至高神ゼウスと同一視されたこともあるようですが、キリスト教の普及に従って再びゼウスと切り離されて考えられるようになり、中世には悪魔のカテゴリへ分類されるようになりました。


●地獄随一の「いい男」
彼は悪魔にしては珍しく、義侠心にあふれた心の持ち主です。
地獄で何か喧嘩が起これば、彼の出番です。姿を現すだけで、こじれていた関係も収拾へ向かうとされており、貫禄だけで言うなら随一です。

そもそも、悪魔となったきっかけそのものが、盟友ルシファーへの義理立てというのだから立派です。ルシファーが軍団を率いて天界に叛旗を翻したときに、義勇軍を率いて駆けつけたのがこのアモンでした。
奮闘むなしく、その後叛乱軍は鎮圧され、関係者はことごとく処分されるわけですが、アモンはそれを恨みに思うことなく、ルシファーに付き従ってその後もずっと行動をともにしています。

このような人物なので、地獄での地位は決して高くはありませんが、地獄内での人気は並みの悪魔を遙かに凌ぎます。
もちろん、高級幹部も彼には全幅の信頼を置いています。王宮の近衛騎士団(三銃士)みたいなものを思い浮かべると分かりやすいかも知れません。

さらに、彼は強いだけでなく、詩の才能も飛び抜けています。
賢王ソロモンに呼び出されたときにも、その御前で詩を披露し、居並ぶ諸侯をうならせていました。この時の詩は今も旧約聖書の「詩編」に収録されているそうです。


●アモンの外見
アモンの外見については諸説あってはっきりしていません。
オオカミである、いやフクロウだ、いやいや、オオガラスみたいな形の悪魔だ……と学者によって提唱する姿が違います。悪魔のイラストを多く載せていることで有名なコラン・ド・プランシーの「地獄の辞典」では、フクロウの頭とサルの胴体、蛇の尻尾というヌエのような姿で描かれます。
なぜかクチバシの中には犬歯が覗き、そこから炎を吐き出すこともあります。

このアモンをモデルにした「デビルマン」も、フクロウとは似つかない格好をしていますが、何となく「炎」をイメージさせるような姿ではあります。
漫画のクライマックスでは全身から炎を噴き出して、狂った人間たちを焼き尽くしました。

ちなみに、彼が人間に変身するときは、フクロウの頭と蛇の尻尾はそのままに、胴体手足だけが人間の形になると言います。

アムドゥスキアスAmduscias

●地獄の音楽家
アムドゥスキアス(アムドゥシアス)は、地獄の大公爵のひとりで、ソロモン72将のひとりに数えられる有力な悪魔です。悪霊の29個軍団を指揮します。

普段は一角獣の姿をしていますが、降霊術で呼ばれた時は、人間の姿を取るようです。注文があれば、目には何も見えないのに、皆がうっとりするようなオーケストラを奏でます。
魔術師に使い魔を与えることもあるようです。



●亜種・別名など
アムドゥシアス

アマゾンAmazon

●乳なしの部族
アマゾンはギリシア神話に登場する女部族です。アマゾニスとも、複数形でアマゾネスとも言います。
彼女らの名は「乳なし」を意味する言葉から来ており、彼らの乳房は片方しかありません。一説には、弓を引きやすいように右の乳房を切り取ったのだと言います。弓の他に槍や斧にも精通しており、三日月型ないし半月型の盾を使用し、乗馬をよくしていました。

アマゾンは一般に知られるように、女だけで部族を作り、女王によって統治されています。純潔の女神アルテミスを信奉し、気性が荒く、独立心が強い彼女らは、年に一度だけ、隣国のガルガレンシアン族のところを訪れ、男性と交わります。
その結果、生まれた子供が女の子であれば育てて、幼時から戦闘技術や狩りを仕込みます。男の子であれば殺すか役立たずにし、あるいは父親のもとへ返すのだとされていました。


●ギリシア神話のアマゾンたち
ギリシア神話には、アマゾンが登場するエピソードが多く存在します。

ヘラクレスの「十二の功業」には、彼女らの女王ヒッポリュテの帯を奪う場面がありますし、また、トロイア戦争では女王ペンテシレイアみずから兵を率いてトロイア側に参戦しています。
ギリシア軍最強の戦士だった英雄アキレウスは、みずから彼女を討ちましたが、その死に顔の美しさに恋したという噂が流れ、それを打ち消すためにアキレウスは僚友を殺したとも言われています。

また、彼女たちは、黒海の小島レウケ島に遠征隊を送ってアキレウスの神殿を掠奪しようとして、アキレウスの亡霊に敗退させられたとも伝えられています。

この他にも、ペガサスに乗った英雄ベレロポンやアテナイ王テーセウスも、アマゾンと交戦しています。


●神話時代以降のアマゾンたち
彼女らはしばしばその実在が信じられ、さまざまな歴史書や旅行記にアマゾンたちの記録が残っています。

マケドニアのアレクサンドロス大王は、カスピ海沿岸のヒュルカニアにおいて、彼のもとを訪ねてきたタレストリスという女王と交わったと言われます。ただ、ギリシアの著述家プルタルコスはその事実を否定しています。

ヨーロッパ中世のベストセラーであるジョン・マンデヴィルの「東方旅行記」には、カルディア(イスタンブール付近の都市)の近くにアマゾンの国があって、そこでは女性が支配権を握っており、やはり彼女らには乳房がない、とされています。
マンデヴィルの説明によれば、身分の高い女性の子供は、盾を持ちやすいように左の乳房を切り取り、身分の低い女性は、弓が引きやすいように右の乳房を切り取るのだそうです。

16世紀には南アメリカの大河および流域の名前に、この部族の名前がつけられました。
探検家フランシスコ・デ・オレリャーナが、この流域に住む女族の好戦的な様子を見て名付けたものですが、一説には、長髪のインディオを見て女族と誤解したのだと言われています。


●アマゾンの正体
アマゾンの正体については諸説ありますが、オレリャーナの例にも見られるように、長髪のスキタイ人の男性たちを、ギリシア人たちが「乳なしの女性だ」と見なした説が有力です。



●亜種・別名など
アマゾニス/アマゾネス

天狗(アマノキツネ)Amanokitsune

●日本書紀の怪異
アマノキツネ(天狗、天狐)は、「日本書紀」に登場する存在です。

舒明天皇九年(西暦637年)7月21日に、雷のような音を立てながら降ってきたと言われ、人びとが流星が落ちてきた、と騒いでいたところ、唐の高僧であった閔僧(びんのほうし)が「これは流星ではない、天狗(アマノキツネ)と呼ばれるものだ」と述べたところから、その名がつきました。

音を立てる流星を「天狗星(てんこうせい)」と呼んでいたことは、「史記」「五雑俎(ござっそ)」にも書かれており、その名の由来は、落ちた場所へ行くと、必ず狗(イヌ、キツネ)のたぐいがいることからと言われ、そこから「天狗」の名前が充てられました。

「天狗」という文字の日本における初見だと言われていますが、いわゆる日本の「テング」とは直接関係のないものです。



●亜種・別名など
天狗/天狗星(てんこうせい)

アマイモンAmaimon

●地獄の東の王
アマイモンは地獄の東の王です。アモイマン、マイモン、メイモンとも呼ばれ、魔道書「ソロモンの小さな鍵(レメゲトン)」に名前の挙げられている72将のひとりに数えられます。
南の王という説もあるようです。

シェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房」や「ヘンリー五世」では、ルシファーやハルバスン(マルバス)とともに、「悪鬼の代表」として挙げられています。



●亜種・別名など
アモイマン/マイモン/メイモン

アロケンAllocen

●地獄の大公
アロケン(アッロケン)は地獄の大公のひとりで、ソロモン72将のひとりに数えられる有力な悪魔です。頭はライオンで、肌は赤い黄金のように光り、輝く鎧に身を包んで、巨大な馬にまたがる戦士の姿を取ります。
燃える炎の眼を持っており、その眼を覗き込んだ者は、自分の死に様が見えると言います。そのショックで眼がしばらく見えなくなる者もいるようです。

占星術と自由七科(中世の大学で教えていた科目:文法、論理学、修辞学、数学、幾何学、天文学、音楽の7項目)などの文芸に通じているとされ、命令されればそれを教えてくれます。



●亜種・別名など
アッロケン/アロケル/アロイエン/アロケス

アガレスAgares

●地獄の公爵
アガレスはアガロスとも呼ばれる、地獄の公爵のひとりです。悪霊の31個軍団を率い、ソロモン72将のひとりに数えられます。
悪魔としては、タゲリ(猛禽類、オオタカの仲間)またはカラスを拳にとまらせ、ワニ(クロコダイル)または陸亀など、さまざまな動物にまたがる金髪の老人の姿で現れます。

人間に変身する時は、片脚を足首から膝まで露出した緑衣の女性の姿を取ることが多いようです。ただし、その声はしわがれた老人のそれです。
言語に関する知識を人間に与え、また、その力は地震でもって表されることが多いと言います。

16世紀の悪魔学者ヴァイエルは、アガレスを地獄の東の国の大公であると言い、地獄の23の公爵の筆頭に置いています。
彼がつかさどるのは、静止するものを走らせ、逃亡したものを引き戻すことであり、また、確立された力と強さ、希望の実現、労働の完成、闘争の成功も支配します。


●ナイルの農耕神
彼はもともとナイル川流域の農耕神であり、同時に時間をつかさどる神でもありました。さらにさかのぼると、七星に配属された神に行き着くことができます。
彼がまたがるワニは、古来より土星の象徴であり、また静止と駆動をつかさどる力は、ギリシア神話の時間神クロノスの持つ力と同じものです。

異教の神であることから、やがてキリスト教に悪魔と見なされ、そのまま復権することなく、現在に至ります。

アーヴァンクAfanc

●ウェールズの水の怪物
アーヴァンクはウェールズ(イギリス西部)地方にその伝承が残る怪物です。その名前から、ビーバーもしくはそれに似た巨大な怪物と考えられていますが、その他にも超自然的なワニや馬、ドワーフ、水の悪魔などさまざまな説が唱えられています。

この怪物は、コンウィ川にあるというシーン・アル・アーヴァンク(アーヴァンクの池)に棲むと言われ、機嫌が悪い時には土手を壊し、コンウィの谷を水浸しにして、農作物をダメにし、牛や馬を溺れさせて水の中に引きずり込むのだと考えられていました。


●アーヴァンク退治
そのアーヴァンクにも、ひとつ弱点がありました。ユニコーンのように、乙女に弱く、その膝で眠るクセがあるのです。
それを知ったコンウィの谷の人びとは、頑丈な鎖を用意し、ヒュー・ガルダンという人物と、彼が所有する二頭の雄牛を呼び寄せます。これらの雄牛は、とてつもない力を持つと評判だったのです。
そして、膝で眠らせる役目はひとりの勇敢な女性が志願し、アーヴァンク退治の態勢は整いました。

果たして、この罠にアーヴァンクは見事はまりました。
池から這いずりだし、女性の膝で眠ったところを鎖で縛り、その端を雄牛の角につけて一気に引っ張り上げました。
それに気づいたアーヴァンクは抵抗するものの、雄牛の力には勝てず、池から引きずり出されたのです。

アイギパンAegipan

●山羊座のパン
アイギパンはギリシア神話に登場する神族(パン神)のひとりです。
ゼウスとその乳母アエクスとの間に生まれ、牧場と家畜をつかさどるパン神のひとりとして崇拝されました。

ちなみに、その名前は「山羊のパン」を意味し、半人半羊の姿をしていますが、ヘルメスの息子の牧畜神パンとは区別されています。

このアイギパンには特別な逸話が残っています。

半人半蛇の怪物テュポンが、最高神ゼウスの足の腱を盗んだ時、伝令の神ヘルメスに頼まれてその腱を取り返しに行きました。その際、テュポンに追いかけられたので、上半身が山羊、下半身が魚のカプリコンという怪物に変身して、水中に逃れたと言われます。

ゼウスはこの時の功績をたたえて、彼を天空にあげて「山羊座」にしたとも言われています。現在の山羊座(カプリコン)が、上半身山羊、下半身魚の姿をしているのはそのためだそうです。

アクリスAchlis

●北欧の獣
アクリスは1世紀の著述家プリニウスの「博物誌」で紹介されている、奇妙な獣です。
スカンジナビアのみに棲息し、ローマでは決して見ることができません。

大鹿に似た草食動物なのですが、身体的に欠陥があり、まず上唇が非常に発達しており、そのため後ずさりしなければ草を食めなかったこと、そして後ろ足の関節がないために、寝る時は木に寄りかからねばならないことでした。一度横になってしまうと、二度と自力で立ち上がることができないのです。

そのため、アクリスを捕らえようと思えば、彼らのやってくる木に切れ目を入れておけば良い、とされていました。
そうすれば、アクリスが木に寄りかかった途端に木が折れ、彼らは地面に倒れるので、やすやすと獲物が手に入るのです。

アケロオスAchelous

●半人半魚の怪物
アケロオスはギリシア神話に登場する半人半魚の怪物です。
オケアノス(大洋神)とテテュスの最年長の子供(河神)と言われ、ムーサ(芸術の女神)のひとりメルポメネと交わってセイレンたちを生み、また、多くの泉のニンフ(妖精)の父となりました。

ギリシア神話では、彼はカリュドンの王女デイアネイラに求婚する存在として登場します。
大蛇や牡牛に変身してデイアネイラのもとを訪れ、しつこく婚姻を迫ったとされますが、あとから来たヘラクレスも彼女と結婚したいと思ったため、両者の間で激しいぶつかり合いが起こります。

アケオロスはさまざまな形に変身して彼と戦いますが、牡牛になったところで角の一本を取られて負け、デイアネイラはヘラクレスのものになりました。この時取られた角は、のちにあらゆる果実や財宝を無尽蔵にあふれ出させるコルヌコピア(豊穣の角)となりました。


●大河の化身
この話はいくつかの寓意を含んでいます。

まず、アケロオスはギリシア最大の大河アケロース川の化身であり、ヘラクレス=人間たちがそれを征服(修繕)して安全な川にしたということ。
彼を倒して豊穣の角を手に入れたというのは、川を修繕することによってさまざまな副産物(農産物、砂鉄、砂金)を手に入れることができたということ、です。

川の修繕がさまざまな富を生むという話は別に珍しいものではなく、日本にも八岐大蛇(=斐伊川)を退治(修繕)して宝剣・草薙の剣を生んだという話が残っています。恐らく、アケロオスの話も、それに似た話なのでしょう。

油ずましAbura-Zumashi

●驚かす妖怪
「油ずまし(油すまし)」は熊本県天草諸島上島の草隅越(くさずみごえ)という峠道にいる妖怪です。じゃがいも頭に蓑を着た姿で現れ、手には油瓶と杖を持っています。澄ました顔で現れることから「油ずまし」の名が与えられ、有名になりました。
明治のころ、老婆と孫がこの峠道にさしかかった時、「昔、ここには油瓶を提げた油ずましという妖怪がおったそうな」と老婆が言うと、「今も出るぞ!」と出現してふたりをたいそう驚かしたそうです。

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