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2014年7月 2日 (水)

アレスAres

●ギリシア神話の戦神
アレス(アレース、アーレース)はギリシア神話の戦神です。ゼウスと正妻ヘラの子であり、その意味では最も由緒正しい神のひとりです。ローマ神話ではマルスに該当します。

ところが、彼は古代ギリシア人にはあまり好かれず、もっぱら恐れられていたようなのです。
それもそのはず、彼は戦争の神であり、すなわち残忍な勇気と血なまぐさい怒り、虐殺をつかさどっていたからです。

詩人ホメロスの語るところによれば、彼はゼウスに最も嫌われた神でした。「戦争や戦闘以外の何の楽しみもなく」「母親ヘラの最も強情な部分を受けついでいる」からです。
「邪悪で気まぐれで、怒りに狂った神である」とまで言われては、ちょっと言い過ぎの感もありますが、正邪、敵味方の区別なく戦う者を支持する(極端な話、アレスの信者同士が戦いを繰り広げる)ことを考えると、ゼウスが鼻白んだのも無理はないと言えましょう。

ローマ神話のマルスが戦神兼農耕神として崇拝されたのとは対照的です。3月を意味するマーチMarchはもともと「マルスの月」を意味します。


●戦地でのアレス
戦闘地域での彼は、通常は徒歩ですが、場合によっては黄金の額帯をつけた足の速い馬に戦車を曳かせ、青銅の鎧をつけ、両手に巨大な槍を握って、戦場を駆け巡り、大地を血で染め上げました。

彼には従者(息子という説もある)デイモス(恐怖)とポポス(驚愕)のふたりが常に付き従い、その後をエリス(闘争)、都市の破壊者エニュオ、陰鬱な神ケールたちが続きました。

こんな神ですから、特に冷静な勇気をつかさどるアテナとは対立することが多く、彼女と喧嘩を繰り広げたこともあります。結果はアレスの無残な負けでした。

また、彼は神々だけでなく、巨人や人間にも負けることがありました。そもそも、彼自身が勝ったという記録は、ギリシア神話にはほとんど見あたらないのです。
二人のアロアダイ(巨人)、オトスとエピアルテスには13ヶ月にわたって捕虜にされましたし、人間のヘラクレスに挑んだ時も、こてんぱんにやられてほうほうの体でオリュンポス山に逃げ帰る始末でした。


●アプロディテとの密通
彼は(多くの子供を残していますが)決して浮気性の神というわけではありません。ただ、ある時浮気したお陰で、大変な大恥をかいたことがあります。
その相手は美と愛の女神アプロディテ。彼女はヘパイストスという正式な夫(※)がいながら、アレスと浮気を重ねました。

アプロディテの夫ヘパイストスはそれを知ると、一計を案じます。目に見えない、とても細かいが大変強くて破れない網を作ると、天井にそれを隠しました。そして、彼は出かけたふりをするのです。

何も知らない二人は、ベッドでいちゃついていると、果たしてその上にヘパイストスの網が被さりました。そして、身動きができなくなっている二人のところへ、出かけたはずのヘパイストスが出てきて、他の神々を呼び、指さして笑いました。

結局、二人はヘパイストスに補償を支払うことを約束し、放免されますが、恥ずかしさのあまり、アプロディテはキュプロス島のパポスへ逃げ、アレスはトラキア(現在のブルガリア)の山中に隠れてしまいます。

(※)……アレスが正式な夫という説もあります。



●亜種・別名など
アーレス/アーレース/マルス

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