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2014年7月 2日 (水)

バロメッツBarometz

●動物+植物=?
バロメッツは植物としての性質と、動物としての性質の双方を持つ珍しい存在です。鳥と植物、羊と植物など、さまざまなバリエーションが考えられていますが、最も有名なものは羊と植物がくっついたものでしょう。
そのため、これらは植物羊The Vegetable Lambと呼ばれることもあります。

この動植物(あえてこう表現します)が最初に紹介されたのは、イタリアのフランチェスコ会の宣教師オドリコが著した「東洋旅行記」においてです。
彼はその中で、カデリという名の大王国のカスピ山脈(コーカサス山脈)において、ある種のメロンがなり、その中に血も肉もある羊が生ずる、と書いています。

同じ記述は同じころの旅行家ジョン・マンデヴィルの「東方旅行記」にも見え、人びとはこの羊を食用にする、と述べています。


●スキタイの羊
ボーヴェのヴァンサン(フランスの学者)は、中世の百科事典「自然の鏡」の中で、「スキタイの羊」と言われるものに言及しています。
この羊は黄色っぽい綿毛に覆われていて、へその緒に似た長い茎で地面と繋がっており、ラグビーボールに似た実からは子羊にそっくりな動物(?)が身を乗り出しており、その緒を切ると血のような真っ赤な汁が出ると言います。

この動植物はスキタイ(現在の黒海北岸地方)に産することから、「スキタイの羊」と呼ばれるのですが、これはオドリコやマンデヴィルの言う「カデリ」の辺りと符合します。


●バロメッツ
さて、題目のバロメッツですが、本来これは中国北部に自生するシダ植物のことでした。
作家の澁澤龍彦は、このシダ植物から綿毛が採れることがあり、しばしば人びとがそれを紡績して糸にすることがあることから、この奇妙な動植物の伝説が生まれたのだ、と指摘しています。

実際、そのバロメッツと呼ばれる植物は、羊の毛に似たうぶ毛を産し、それを脱脂綿代わりに使うこともあったとのことです。
ちなみに、バロメッツとは子羊を意味するタタール語に由来するとのことです。


●バロメッツ伝説
こうした真相?があるにもかかわらず、人びとは動物と植物が融合したというロマンのある方を選びました。

17世紀に著されたトマス・ブラウンの「俗信論」でも、バロメッツは根のある動物で、周囲の草を食べて育つと書かれていますし、また別の説では、草を食べ尽くすと死ぬので、それを狼や人間が収穫に来るのだと言われていました。

ちなみに、その身体はカニの身のような味がするそうです。ヒヅメは毛でできており、羊毛のようで、人間が布を織るのに使われた、とも述べられています。



●亜種・別名など
植物羊/スキタイの羊

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