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2014年7月 3日 (木)

カラドリオスCharadrios

●病を吸い取る鳥
カラドリオスは、古代ローマおよび中世ヨーロッパの動物寓意譚に登場する鳥です。その名前はチドリの仲間ムナグロを意味するギリシア語ないしラテン語から来ており、いちおう実在する鳥です。
いっけん、何の変哲もない鳥なのですが、古代ローマや中世ヨーロッパでは、とある不思議な習性を持つということで、しばしば重要視されました。

その習性とは、病人のところに連れてゆかれると、ひと目でその病気が死すべきものなのか、それとも治る可能性を持つものなのかを判断するというものです。

病人が死すべき運命にある時は背中を向けて無視し、治る可能性がある時はくちばしを開いてその病を吸い取り、天高く舞い上がり、吸い込んだものを汗のように発散して、一日にして病を癒します。

むろん、実在のムナグロにそのような習性がないことは周知の通りですが、毒ガスに対するカナリアの如く、当時はそのような伝説がまことしやかにささやかれたのです。


●カラドリオスの伝説
この鳥が病気を吸い取るという伝説はかなり古くから信じられており、古代ギリシアにまでさかのぼることができます。古代ローマの学者プリニウスの「博物誌」にも、この動物は登場します。古代ギリシアでは黄疸を吸い取る鳥として重宝されました。

中世に入ると、この鳥は黒い部分がひとつもない純白の鳥ということにされ、しばしばイエス・キリスト自身と同一視されました。
ちなみに、図鑑などを調べると分かるのですが、ムナグロ自身は羽にしっかりと黒い点々を持っており、純白とは程遠い鳥です。

しかし、そんなことなどお構いなしに、中世に入ると御救いをもたらす鳥として、ますますこの鳥は神格化されるようになります。

14世紀の作とされるフランス・リヨンのサン・ジャン大聖堂のステンドグラスには、病人の枕元に寄り添うカラドリオスの姿を見ることができます。

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