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2014年7月 3日 (木)

ゴーストGhost

●文化としてのゴースト
あらゆるモンスターの中でも、「ゴースト(幽霊、亡霊)」ほど普遍的な存在は他にありません。

妖精や精霊と違い、今でもその実在を疑わない人は多く、目撃例や体験例が引き続き報告され続けています。それまでに報告された研究結果や事例報告は厖大な数にのぼり、大きな本屋ならばそれだけで棚の一ジャンルを占めるまでになっています。

私たちにとっても重要な存在であるゴースト。その多くは、この世に心残りかを持ったために成仏できない者たちだとされています。

何が心残りなのかはシチュエーションによって違っていて、親類や友人たちどうしても伝えたいメッセージ、あるいは死に追いやった者への恨み辛み、伝え損なった大事なことづて、あるいは残る者への切なる愛情……などです。
また、「死後の世界に行くのはイヤだ」といった身勝手な理由、わけは分からないけどどうも成仏できない……という不可思議な理由の場合もあります。

いずれにしろ、思いを果たしたり、魂を現世に繋げている要因が解消されたとき、彼らは初めて「成仏」して、この世から脱することができます。


●成仏できないゴーストたち
いろんな理由で成仏できない、あるいはさせられない場合は、僧侶に頼んで「お祓い(エクソシズムExorcism)」を行ってもらい、ムリヤリこの世から追放してもらうしかありません。
カソリック(ローマ教会)には今もこうした「お祓いのプロ」が何人もいると言います。

強すぎる妄執のために天国も地獄へも生けずに、永遠に現世を彷徨う者もいて、その多くは「亡霊」や「浮遊霊」と化し人々にちょっかいをかけます。
あるいは死の世界の入り口を開けて生者たちをそちらにいざなおうとします。彼らの誘いに乗ってその「門」をくぐってしまえば、二度と現世に戻ることはできません。

昔はこうした魂がことあるごとに生者の魂を抜き取ってゆくと考えられたようで、葬式や祭礼といったものは、こうした死者たちの霊を「いかにうまく鎮めるか」といったところから生み出されたものです。
お盆や祭の山車(だし)など、いっけん私たちが何気なく接している年中行事の中にも、実は死者と深く関係しているというものは多いのです。


●憑依するゴーストたち
ゴーストが目的を果たすときは、たいてい「憑依」という方法を使います。生きている人間の身体を借りて話をしたり、目的の場所を訪れたり、どうしても触れておきたいものに触れたりします。
多くの目的を達すれば彼らは満足し、身体から離れていきますが、執着も能力も強い、いわゆる「悪霊」に取り憑かれると、場合によっては身も心も支配されます。元の持ち主の魂が追い出されることもあるようです。

こうして追い出された魂は、新たなゴーストとなって、己の容れ物となる身体を求めて彷徨うことになります。

逆に、生者の側からゴーストを呼び寄せ、人間に取り憑かせることも可能です。このような手段を「降霊術(交霊術)」と言います。有名な降霊術と言えば恐山のイタコなどの名前を挙げることができます。

手軽にできる降霊術にはいくつか種類がありますが、その中でも一番手軽なのは何と言っても「コックリさん」でありましょう。コックリさんは「狐狗狸さん」と書き、つまりはキツネやタヌキなどの低級霊を呼び寄せて予言や助言を行わせるものです。
悪霊を呼び寄せることもあると言いますから、慣れていない人間がやるとあっという間に取り憑かれ、支配されてしまいます。ゆえに気軽に行うのは禁物です。

実際には取り憑かれていなくても、こうしたプロセスを経ることで、「自分は霊に支配されたのだ」と思いこみ、それが二重人格発現のきっかけとなることがあるようです。
言わば「自己催眠」みたいなもので、「悪魔や悪霊に取り憑かれた」というケースの大半は、こうした「自己催眠」タイプの現象であると言われています。


●ゴーストの分類
一般にゴーストは、狭義のゴースト、スペクター、ファントム、スピリット、アパリション、レイスなどに分類することができます。

狭義のゴーストGhostはいわゆる「お化け」のです。人に布をかけたような形をしており、目と口に当たる場所は空洞。ふわりふわりと夜空を漂い、道行く人を驚かせます。

スペクターSpecterは恐ろしい姿をした幽霊です。「亡霊」「死霊」と言う訳語を与えられる場合もあります。出遭った者は例外なく魂の底から慄(ふる)えることになるでしょう。幽霊譚で語られるゴーストはほとんどの場合、このスペクターです。

ファントムPhantomもしくはファンタズムPhantasmも幽霊の訳語が与えられますが、必ずしもそれが「死者の霊」であるとは限りません。
死者に似た人間が現れたり、景色に人間の姿が見えたり、現れるはずのないものが眼前に現れたり……そのような、いないはずの連中が目の前に現れたりする「現象」を、ファントムと称するのです。

ですから、幽霊船、幽霊飛行機なども「ファントム」に入ります。幽玄自在に現れることから文字通り「ファントム」と名付けられた戦闘機もあります(F-4ファントム戦闘機)。心霊写真や心霊ビデオなどに現れる幽霊もこの「ファントム」に入れてもいいのではないでしょうか。

この言葉は元々「不思議な存在」「目に見えないが存在するもの」を意味する古代ギリシア語のファンタシアPhantasiaに由来するもので、「幻想」を意味するファンタジーFantasy、「現象」を意味するフェノメノンPhenomenonと同じ系統の言葉です。

スピリットSpiritは「幽霊」と言うより「魂」「精霊」という訳語がぴったり来ると思います。生霊、死霊の別を問わず、あらゆる魂をその範疇に含み、妖精や精霊、悪霊やキリスト教の聖霊などもこのスピリットの範疇に含まれます。
なお、お酒のスピリットは「魂を奮わせる飲み物」というところから名付けられました。

アパリションApparitionは端的に言ってしまえば「映像」です。
通常の幽霊のように、移動したり取り憑いたり……といったことはできません。その場にいつまでも居続けて、表情や身振り手振りで出遭った者にメッセージを伝えます。怨念や願望が解消されると同時に消えるのも、たいていこのアパリションです。

最後に、レイスWraithという言葉を挙げましょう。これは「生霊」に当たるもののうち、死に臨んで現れる「思念」のことを差します。
思念と言っても、喋ることも触れることも可能なものですから、誰もそれが「霊魂」であるとは気づきません。
むしろ、後でその人物が出会ったころには既に死んでいたことを告げられ、改めて驚くわけです。余談ではありますが、筆者(富士)の親戚にもこのレイスを目撃した人がいました。

ゲームなどでは、レイスと言えば他人に取り憑いて悪さをなす連中とされています。ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(D&D)などではそこだけ闇に包まれたような感じで、人型をした怪物です。


●ゴーストの寿命
ゴーストのほとんどは、数年もしくは数十年経つと自然に成仏します。しかし、場合によっては何百年、何千年も存在し続ける場合があるそうです。
例えば、イギリスのヨークミンスター宝物館の地下室には、何と2000年前の古代ローマ時代の兵士たちが「今も」行進し続けているという話です。



●亜種・別名など
幽霊/亡霊/死霊/悪霊/霊魂/魂魄(こんぱく)/スペクター/ファントム/ファンタズム/スピリット/アパリション/レイス

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