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2014年7月 3日 (木)

グールGhoul

●肉を食う悪しき精霊
グールは人間の肉を好物とする怪物です。
その食性からしばしば「食人鬼(しょくじんき)」「食屍鬼(しょくしき)」などと呼ばれ、人々に恐れられています。ゾンビと並ぶリビングデッド(生ける死体)の代表格であり、その活動範囲も、ゲーム、マンガ、小説、映画を問わず、あらゆる作品に及びます。

もともと彼らは、アラビアの伝承から生まれた存在です。
と言っても、今のように死体が甦ったものではなくて、アラビアのジン(精霊)の一種か、もしくは死体にジンが取り憑いたものでありました。その意味では「リビングデッド(生ける死体)」と言うよりはむしろ「レイス(取り憑く霊魂)」に近いかも知れません。

アラビアでは日本の「精」と同じく、その存在はかなり広く認知されており、「千一夜物語(アラビアン・ナイト)」ひとつを見ても、「シンドバッドの冒険」「アリババと40人の盗賊」など、メジャーどころにはたいてい登場しています。


●彷徨う死体
グールという呼称は、アラビア語の「災厄」を意味する言葉から来ています。
もともとは墓場などに感じる恐怖を差した言葉だったらしいのですが、やがてその場所をテリトリーとする怪物の名前に使われるようになりました。
なお、「グールGhoul」という呼称は種族名、もしくは男性形であり、女性のみを表すときは特に「グーラーGhulah」という名前を使います。

彼らはきわめて高い再生能力を持つ存在で、不死身の属性を持ち、首を切り取られても手足をもがれても、すぐにくっつけて元に戻ってしまいます。これを防ぐには聖水か火を使って身体を焼き切るしかありません。

アラビアの伝承では、やはり不死身なのは変わりませんが、ただ一つ円月刀(シミター)で腹を断ち割られるのだけは苦手、とされています。
首や手足であればいくらでも再生できるのに、なぜか腹だけはその傷口を塞ぐことができないのです。

ただ一つ注意したいのは、死の間際のセリフとして、「私を本当に殺したければ、もう一度腹を断ち割るが良い」と告げる場合がありますが、これに引っかからないようにすることです。
信用して同じように腹を切り裂いてしまうと、グールは何と元通りの身体になってしまいます。


●グールの外見
アラビアのグールに関するもう一つの特徴として、「生きた人間そっくり」という部分が挙げられます。映画のような、死体がそのまま甦った姿ではないのです。

もちろん、怪物ですから、人間とまるっきり同じというわけにはいきません。
よくよく眺めれば、どこかしらに「人間ではない」、あるいは「人間離れした」部分を見つけることが可能です。男性ならば、顔がやけに長いとか、目が飛び出しているとか、鼻が象のように伸びているとか……。
アラビアの絵画ではしばしば「毛深い黒人」の姿で描かれます。

一方、女性はと言えば、こちらはたいてい絶世の美女です。セクシーな姿で人前に現れ、スケベ心で近づいた男を物陰に誘い、ガブリとその肉に食らいつきます。


●グールとゾンビ
この怪物は、しばしば同じリビングデッド(生ける死体)であるところの「ゾンビ」と混同される傾向にあります。

もちろん、両者はまったく違う存在です。
グールはアラビアの伝承に登場する存在であるのに対し、ゾンビはハイチの黒魔術ブードゥーの風習が元になっています。恐らくはジョージ・A・ロメロ監督の名作ホラー映画「ゾンビ(原題:Night of the Living Dead)」のゾンビイメージが元になっているのでありましょうが、ヴァンパイアに代表される「墓場を渡り歩く生ける死体」の伝承なども、少なからず影響しているのかも知れません。

現代のゲームや小説などでも、しばしば両者は同じようなものとして扱われますが、近年は設定上の必要性からか、「暴れん坊なのがグール」「おとなしいのがゾンビ」、「人肉を喰らうのがグール」「仲間を増やすために人間を襲うのがゾンビ」と言うように、ある程度キャラクターの「色分け」がなされているようです。



●亜種・別名など
食人鬼/食屍鬼/腐肉食らい/死体食らい/グーラー(女グール)/ゾンビ

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