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2014年7月 3日 (木)

グリフォン(グリフィン)Griffon/Griffin

●ライオンと鷲の複合怪物
グリフォン(グリフィン)はインドの伝承に起源を持つ怪物です。
ワシの上半身と翼、ライオンの下半身を持ちますが、ライオンの4倍とも8倍とも言われる巨体の持ち主であり、その爪やクチバシは強力な武器となります。
もちろん、力も並はずれており、馬を「武装した人間ごと」空中へ持ち上げることが可能です。かのドラゴンやゾウでさえも彼らに正面から太刀打ちすることはできません。まさに「怪物の中の怪物」、あらゆる怪物の王たる存在です。

唯一弱点と言うべきものを挙げるとするなら、巨体ゆえに小回りが利かないというところでしょうか。なので、フットワークの軽いトラだけは、この怪物の攻撃をすり抜けることができると言います。

ちなみに外見についてはいくつかのパターンがあり、上半身がワシではなくハゲタカになっているもの、下半身がライオン以外の動物のもの、尻尾が蛇になっているものなどが存在します。


●グリフォンの由来
彼らの歴史はきわめて古く、3500年前のインドには、既に原型となるべき怪物を描いたタペストリーや印章が存在しておりました。
なぜワシでなく、ライオンでもなく、両方の性質を持った怪物なのかについては分かっておりませんが、双方とも気高い精神の持ち主であり、広く崇拝を集めていたので、この2つを掛け合わせてより崇高な存在を作りだそうとしたのかも知れません。
東方のドラゴンがさまざまな伝承を経てライオンとワシのキマイラになった、とする説も有力視されています。

彼らはその美しさから、ヨーロッパにおいてしばしば絵画や紋章のモチーフになってきました。
国家や都市の紋章にもしばしばこの怪物の姿が使われます。ナルニ市(ナルニア国のルーツと言われるイタリア中部の都市)の市章にもグリフォンが使われています。

グリフォンの名前については、ギリシア語の「曲がったクチバシ」を意味するグリプスGryps、もしくはグリュプスGrupsが由来であると考えられています。恐らくはワシのクチバシからの連想でありましょう。


●神話・伝承の中のグリフォン
インドから生まれたこの怪物は、その姿の美しさからアジアはもとより、ヨーロッパでも広く信仰を集めるようになります。
神話や聖書でも、彼らは重要な役割を持った幻獣(怪物)として扱われ、ギリシア神話では神々の馬車馬、もしくは金鉱の守護神でありましたし、エジプト神話ではスフィンクスの一形態(ヒエラコスフィンクス)、バビロニア神話では創世神ティアマトの幻獣の一つとして描かれています。

旧約聖書にもこの怪物が「智天使(ケルビム)」のひとつとして登場しておりますが、なぜかこちらはライオンでなく牛の身体です。
エルサレムのグリフォンは病気を治す能力を持つと言われました。なぜかアレクサンダー大王の馬車を牽いたのも彼らであることになっています。

古代ローマの歴史家ヘロドトスも、著書「歴史」の中でこの怪物に触れており、それによれば彼らは金鉱の番人であり、それゆえに金を奪いに来る隻眼の民族アリマスポイ人と常に戦いを繰り広げていたそうです。
博物学者プリニウスも著書「博物誌」の中でこの怪物を紹介しておりますが、「ペガサスなどと同じで伝説上の存在に過ぎない」と一蹴しています。

14世紀の旅行家マンデヴィルは、プリニウスが否定したにもかかわらず、著書「東方旅行記」の中で、この怪物を「インドに実在する存在」だと書き残していて、その爪は人間の杯に、羽の骨(あるいは肋骨)は弓の材料として使われると述べています。
恐らくはサイかダチョウを差していたのではないでしょうか。


●黄金とグリフォン
グリフォンは黄金が大好きです。巣穴にはどこからか集めた黄金がびっしりと敷き詰められており、それゆえに彼らを追い求める冒険家が後を絶ちませんでした。これは、グリフォンを聖獣と崇めたスキタイ人の姿が影響しているものと言われています。

ちなみに、その巣の中にはしばしば瑪瑙(めのう)が大事に置かれている場合があります。しかし、何の目的でその石が置かれているのかは不明です。

なぜか彼らは、馬について異常なまでの執着を持っています。見つけるとたちまち獰猛になり、息絶えるまで引き裂こうとします。
その執着が、果たして食欲から来るものなのか、敵意からなのか、それとも別の何かから来るものなのかについては、よく分かっていません。

ちなみに引き裂くのはオスだけで、メスだと分かるとのしかかって孕ませようとします。その結果、グリフォンと馬の合いの子「ヒポグリフ」(ヒポは馬を意味する接頭語)という上半身がワシ、下半身が馬というハーフが誕生することがあるようです。

このヒポグリフは、馬嫌いのグリフォンと馬という組み合わせであることから、「本来あり得ない組み合わせ」転じて「不可能」の象徴になりました。


●グリフォンの象徴するもの
グリフォンほどさまざまな寓意をその中に含むものはほかにありません。その獰猛な性格から「悪魔」の象徴と考えられる一方で、「空(ワシ)」と「地(ライオン)」の双方を含むというところから「宗教的統一」、転じて教会や法王を表すこともありました。

また、その勇猛さ、美しさから「王」「王者の風格」「英雄」「力強さ」などの象徴としても使われ、黄金(大切なもの)を守護するというところから転じて「知識」の守護者としての役割も持ちます。

さらに時代が下がると今度は「王」転じて「王家」そのものを表すものとして、その図案が紋章やトレードマークに使われるようになりました。当時の王家や貴族の紋章に、しばしばグリフォンをかたどったものが登場するのは、そうした流れによるものです。



●亜種・別名など
グリフィン/グリッピン/グリュプス/ヒエラコスフィンクス/ヒポグリフ

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