« ヘパイストスHephaestus | トップページ | ヘラクレスHercules »

2014年7月 4日 (金)

ヘラHera

●ゼウスの正妻
ヘラはゼウスの正妻にして、オリュンポス女神の中でもひときわ強大な力を持った女神です。
ギリシア十二神のひとりであり、ローマ神話のユノ(ジュノ)Junoに当たります。名前の由来は「ヒーロー」の女性形「ヘロス」の変じたもので、「貴婦人」という意味です。パイア(乙女)、テレイア(成人女性、妻)、ケラ(寡婦)の呼び名もあります。

彼女はゼウスがただひとり、正妻として認めた存在で、そのため、特にローマにおいて、結婚と子供、女性の性生活を守る女神として崇拝されました。ギリシアでも人気はきわめて高く、アルゴス(ギリシア南部)のヘライオン島やサモス島では主神の地位にあったということです。

もともとはアルカディア(ギリシア中央部)の大地母神でしたが、ギリシア民族の侵入に従って、最高神ゼウスの正妻として神話に組み込まれました。
彼女の結婚式には、祖母のガイアからお祝いとして「黄金の林檎」を与えられ、その林檎はヘスペリス(アトラスの娘たち)の園でニンフ(妖精)たちによって守られています。


●ゼウスの姉
神話によれば、彼女はクロノスとレアの子供で、ゼウスとは姉弟の間柄にあります。
そのクロノスが、「将来子供によってその主神としての地位を奪われるであろう」と神託を受けたため、彼女は生まれて間もなく、クロノスによって呑み込まれるという不遇をかこっています。
この時は、ゼウスおよびオケアノスの娘メティスの活躍により、吐き出されて難を逃れています。

別の説では、サモス島で生み落とされた後、オケアノス(大洋)とテテュスがその身柄を預かり、世界の果てで養育し、クロノスたちが仲違いした時にはその仲裁を買って出たとも言われています。
彼女を育てたのは他にホラたち(ゼウスの娘)、テメノス、あるいはアステリオンの娘たちという説もあるようです。


●嫉妬の女神
彼女は数ある女神の中でも、とりわけ嫉妬心が強いことで知られます。ゼウスが浮気をすると、時にその女性に、時にその子供に苦難を与え、復讐をしました。ヘラが出てくる話は、たいていがゼウスの浮気がらみです。

彼女は結婚してヘベ、エイレイテュイア、アレスを生んだのち、早くもゼウスの浮気に悩まされました。

特に、メティスとの子供は「天の支配者になるだろう」とガイアから予言されていたので、ゼウスはそれを隠すため、妊娠したメティスを子供ごと呑み込んでしまいます。
そこへ、人間に火を与えたことで有名なプロメテウス(ヘパイストスという説もあり)が斧でゼウスの頭をかち割ったところ、完全武装したアテナが生まれたので、ヘラは「夫がひとりで神を生んだ」と誤解し、対抗心から自分も1年間、ゼウスの交わりを断って、自分の力で子供を生もうと考えます。そうして生まれたのが鍛冶の神ヘパイストスだと言われています。

あまりに浮気の度が過ぎるため、愛想を尽かしてゼウスのもとを去ったこともありました。この時は、ゼウスが樫の木の人形にベールをかぶせて「新しい妻である」と行進して触れ回ったので、嫉妬から思わず飛び出してそのベールをはぎ、誤解だと分かって仲直りしています。

ちなみに、ゼウスが人間の女性アルクメネと交わった時に生まれた子供ヘラクレスには、これでもか!というくらいに、苦難を与え続けました。
彼が「十二の難業」を果たさなければならなくなったのは、ヘラの陰謀だと言われています。しかし、彼が神としてオリュンポス十二神の仲間入りをした時には、自分の娘ヘベをめあわせて仲直りしています。


●不老の女神
ヘラは神々の母でありますが、その姿は常に若々しく、美しくあります。それもそのはず、彼女は毎年春になると、カナトスの泉で年齢と苛立ちを洗い流し、元の若々しい姿を取り戻すのです。
美貌についても、美の女神アプロディテ、知恵の女神アテナと遜色ないと言われています。「黄金の林檎」事件において、彼女が二人と美貌を競い合い(アプロディテに負けはしましたが)、それがきっかけでトロイア戦争が起こったことはよく知られるところです。


●自然の脅威
一説には、彼女はゼウスが天候の脅威をつかさどるのに対し、彼女は自然そのものが持つ脅威を表していると言われています。
ヘラクレス(日本語に訳すと「ヘラの栄光」)がヘラに幾度となく難業を与えられ、それを果たしていくのは、ヘラクレス=人間たちが力を合わせてヘラ=自然に立ち向かい、脅威を乗り越えていく姿を表しています。



●亜種・別名など
ヘーラー/パイア/テレイア/ケラ

« ヘパイストスHephaestus | トップページ | ヘラクレスHercules »

ギリシア神話の神々」カテゴリの記事