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2014年7月 4日 (金)

ヒュドラHydra

●ヨーロッパの九頭竜
ヒュドラはギリシア神話に登場する多くの頭を持つ怪物です。
「九頭竜」と訳されることからも分かるように、多くの首を持つ怪物であり、テュポンとエキドナの間に生まれた子供でした。この怪物は、やがて神々の女王ヘラにより拾い上げられ、アルゴス近郊のレルネの野にあるアミュモネの泉で育てられました。

その首の数は九つとも百とも言われ、すべての首に驚異的な再生能力があります。首をいくら切り落とそうとも、その切り口から新たに二つの首が生えるとされ、真ん中の頭は不死でした。
また、猛毒の持ち主であり、その血に触れた者は死に絶え、不死の者であっても、耐え難い痛みが走るとされました。


●ギリシア神話の怪物
この怪物に縁が深いのは、英雄ヘラクレスです。

彼はヘラに言いつけられた十二の難業の二番目に、この怪物の退治を言いつけられました。彼は切っても切っても再生する能力に苦しめられますが、異母弟(甥という説もあり)のイオラオスに切り口を松明の炎で焼かせて、その再生能力を封じます。
そして、唯一不死の首であった真ん中の首は、大岩をその上に置いて地中に封じます。

このとき、ヒュドラを助けるべく、ヘラによって蟹がつかわされますが、ヘラクレスはそれを一足のもとに踏みつぶします。
しかし、その勇気は比類なきものとしてたたえられ、その身体は天空に挙げられて星になりました。それが今の蟹座です。

2世紀ごろの地誌学者パウサニアスの「ギリシア案内記」によれば、この怪物はアミュモネ川の水源にあるプラタナスの木の下に住んでいるとされていますが、なぜか彼は、その首は一つであると述べています。


●天変地異の象徴
ヒュドラはその形態から、アミュモネ川の象徴であり、ヘラクレスがそれを退治したというのは、ヘラクレス=人間の集合体がそれを治めたということだったと推察されますが、なぜか不思議なことに、長い歴史の中に、ヒュドラの「実物」とされるものが取引された、という記録がいくつも記録されています。

たとえば、16~17世紀の博物学者トプセルは、「爬虫類動物誌」という本の中で、550年ごろにヒュドラの実物がヴェネチアにもたらされ、その後ダガット金貨600枚という高値でフランス国王に贈られたことを挙げており、彼はそれを「天変地異の予兆だった」と述べています。

おそらくは、奇形のトカゲもしくはヘビ、あるいは既存の動物の剥製を改造して作った人工物だったのではないかと思われますが、しばしば、世界の「どっきりニュース」などで、いくつも首のある動物などが紹介され、それが世の終わりを告げるようなセンセーショナルな出来事として伝わることがあります。
たぶんに、この「ヒュドラの実物」も同じようなものだったのではないでしょうか。


●近世のヒュドラ
17世紀初頭に書かれたゲスナーの「動物誌」には、七つの首を持ち、それぞれの頭に王冠をかぶったヒュドラの姿が紹介されています。
このことから、ヒュドラはキリスト教の「黙示録の怪物」を指すのではないか、とする研究者もいます。また、ここで言うところのヒュドラは、怪物でも何でもなく、単なる大ダコとする説もあるようです。



●亜種・別名など
ヒドラ

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