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2014年7月 4日 (金)

一反木綿Ittan-Momen

●布の妖怪
一反木綿(いったんもめん)は大隅(鹿児島県)で語られる妖怪です。
「ゲゲゲの鬼太郎」で有名になりましたが、もとはローカルな妖怪であり、人を殺すこともあるという、恐ろしい存在です。

一反(縦10.6メートル、幅38センチぐらい)の布の形をしており、夜にヒラヒラと舞って人の通りかかるを待ちます。
ひと目には洗濯物が飛んでいるようにしか見えません。しかし、それが突如人へ襲いかかります。そして、首に巻き付いたり、顔面を覆ったりして窒息させ、息の根を止めるのです。

その正体はものの精という説もあるようですが、では何の精なのかと言えば、とんと見当がつきません。

一反木綿の性質を表すエピソードとして次のような話が伝えられています。
ある夜、ひとりの男が家路を急いでいると、空からスーッと白い布が落ちてきました。驚いて足を止めると、布は突如男の首に絡みつきます。
男は持っていた脇差しで布を斬ると、布はどこかへ消えてしまいました。しかし、男の手には血しぶきがついていたということです。


●衣のお化け
平安時代末期に編まれたとされる「今昔物語集」には、次のような話が載っています。

冷泉院(れいぜんいん)の東に僧都殿(そうずどの)という怪物屋敷がありました。頻繁に奇異なことが起こるので、ついには誰も住む者がいなくなりました。

この僧都殿の敷地の戌亥(いぬい:北西)に、古い榎(えのき)の大木があって、夕方になると一枚の単衣(ひとえ)がふわり、と飛来し、榎の枝に止まるので、それを見た人は近づかぬよう気をつけていました。
ところがある日、とある武士が、その化け物を退治しようとやって来ました。

果たして、夕方ごろになると、確かに竹藪の中から一枚の単衣が飛んできました。
武士はやにわに弓を射ると、その単衣に見事命中しました。ところが、単衣は何事もなかったかのように榎の枝に止まります。しかし、榎の下の土を見ると大量の血の跡があるので、こいつは怪物に傷手(いたで)を与えたか、と思い、意気揚々と帰ります。

武士は帰宅すると、皆にあったことの顛末(てんまつ)を伝えます。皆はゾーッとして、肌に寒さを覚えますが、当の本人は涼しい顔。夜になって何事もなく寝床に入りました。

しかし、翌朝、武士が起きてこないので寝床へ確かめに行くと、本人は既に亡くなり、冷たくなっていました。それを聞いてもろびとは、「功名に駆られて赤い単衣に殺されたか」とあざ笑った……という話です。


●ヌノガラミ
また、青森県には次のような伝説が残っています。

三戸郡の長坂というところに、昔、「布沼」という大きな沼がありました。この沼には「ヌノガラミ」という妖怪が棲んでおり、人びとに恐れられていました。
布に化けて水のほとりに引っかかったふりをして、それを取ろうとした人を沼の中へ引きずり込み、溺れ死にさせるというのです。

ある日、妻子をこの「ヌノガラミ」に殺された男が、この怪物を退治せんと乗り込みます。神のお告げで鳩の卵を一箇持っていき、沼のほとりで一心に祈り続けていましたところ、沼がにわかに音を立てて、水がざわめき出しました。
そこで男は、この時とばかりに鳩の卵を割り、布沼へと投げ込みました。すると、大きな音を立てて、水面に「ヌノガラミ」の屍体が浮かび上がったということです。


●中国の「一反木綿」
似た話は日本ばかりでなく、中国にも残っており、蒲松齢の中国の怪談集「聊斎志異(りょうさいしい)」には、一反木綿に似た「衢州(くしゅう)三怪」という妖怪の話が綴られています。

浙江省(せっこうしょう)の衢州という町には、夜になると3種類の妖怪が徘徊すると言われていました。

第1の妖怪は、一本の角を生やした人間の姿で、城壁の上の鐘楼(しょうろう)に棲んでいます。

第2の妖怪が一反木綿に似た姿で、城内の池の岸辺に棲んでおり、布のような形をしています。人がそれを拾おうとすると、たちまち動き出して、身体に巻き付き、池の中へ引きずり込んで溺死させるのだそうです。

第3の妖怪は池の中に棲み、アヒルのような形をしています。



●亜種・別名など
布団被せ/衾(ふすま)/ヌノガラミ/衢州三怪

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