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2014年7月 5日 (土)

ケンタウロス(セントール)Kentauros/Centaur

●半人半馬の種族
ケンタウロス(セントール)はギリシア神話に登場する怪物の名前です。
人間の上半身に馬の下半身を持ち、性格は獰猛にして粗野、その上好色であり、女性を見ると襲わずにはいられません。

ケンタウロスの呼称は「百人隊」を意味するギリシア語センチュリアCenturiaに由来します。現れるときはたいてい大勢の仲間を引き連れているからです。
その他に、古代インド神話の「神々の御者」ガンダルーヴァの名前から来ているとする説もあります。


●ギリシア神話のケンタウロス
もともとはギリシア神話に登場する怪物の名前であり、雲の女神ネフェレと、テッサリアの王イクシオンの間に生まれた存在でした。

イクシオンは人類史上初の親族殺し(義父殺し)を行っただけあって畏れというものを知らず、女神ヘラに横恋慕し、あまつさえ手まで出そうとしたので、夫の至高神ゼウスが雲(ネフェレ)を加工し、妻の姿に似せた女神を作って、それをこの傲慢な王のもとへと送り込んだのだそうです。

二人の間に生まれたこの怪物は、やがてテッサリアのペーリオン山に本拠を移し、ケンタウロウイ(ケンタウロス族)と呼ばれる種族を構成するまでその数を増やします。

彼らはほとんどの連中が生まれながらのすぐれた戦士であり、弓矢を自在に操って周辺各国を荒らし回ったと言います。

ひどい乱暴者ばっかりで、歴史家のヘロドトスも「野獣ばっかりだ」とこき下ろすほどでしたが、賢者がいなかったわけではなく、特にケイローンというケンタウロスは医学、音楽、運動競技、狩り、弓術、予言など、ありとあらゆる技術に通じ、自然知識や天文学にもすぐれ、さらにヘラクレスやトロイア戦争の英雄アキレウス、「アルゴー探検隊」の隊長イアソン、アポロンの息子で医術の神のアスクレピオスなどを育て上げるなど、輝かしい功績を挙げたことで知られます。

それもそのはず、彼だけは生まれが違い、ゼウスの父クロノスとオケアノスの娘ピリュラの間に生まれた、いわゆるゼウスの従兄弟に当たる存在なのです。

ちなみに、黄道十二宮の一つ射手座(人馬宮、サジタリウス)は、このケイローンが天空に挙げられた姿です。


●ケンタウロスのルーツ
昔から馬とともに現れる人間は畏敬の対象でありました。高速で移動し、疲れを知らず、なおかつ強力な武器を手にして、強力な敵にも臆することがない……。こうした姿が、ケンタウロスのイメージ形成に強く影響しました。

ギリシア神話のケンタウロスも、中央アジアに勢力を拡げていた遊牧民族スキタイの姿をもとにしているという説が有力です。
スキタイは紀元前5~6世紀ごろに黒海沿岸へ強力な版図を築いた部族で、ペルシア、ギリシアの両帝国とほぼ互角に渡り合い、しばしばその領土への侵入を試みたりもしています。

ギリシア人が自分たちの街へ迫り来るスキタイの姿を見たとき、その目に映るのは人馬一体となったような見事な姿。思わず、文字通り「人の上半身と馬の下半身を持った」怪物の姿を思い浮かべても決しておかしくはありません。

実際、馬を知らない、あるいは知っていても積極的に使おうとしない地域では、ケンタウロスの伝説が生まれやすい傾向にあるようです。

かつてスペイン人がインカ帝国に攻め入ったとき、見も知らぬ四つ足の巨大なケモノ(=馬)に乗ってくる敵の姿を見て、インディオたちの間で「人の上半身を持った四つ足の怪物だ~」と大騒ぎになりました。
その後、馬という動物がインディオたちに知られるようになったその後も、ケンタウロスのような怪物の伝承が彼らの間で生み出され、長らく語り継がれたということです。


●ケンタウロスの象徴するもの
ケンタウロスは人間と野獣(馬)の合わさった姿です。ゆえに、「精神性(人間的部分)」と「獣性(動物的部分)」を融合・調和させる者、完全なる者を表すものとして扱われる場合があります。
その逆に、人間の押さえきれない情欲や誘惑といった部分を象徴することもあるようです。シェイクスピアの「リア王」でも、「ケンタウロスCentaur」という言葉は「女性の抑えきれない情動」みたいな意味で使われます。

キリスト教では、キマイラ(複合動物)のような姿を持っていることから、この怪物は「異端」の象徴として扱われます。異端はどっちつかず、あるいは両極端な教義を持っていることが多いからです。
中世にはフォルムの美しさからしばしば紋章のモチーフとしても使われました。


●ケンタウロスのバリエーション
ところで、ケンタウロスという呼称は、何も馬に限ったわけではなく、半人半獣の形を持つ怪物すべてを表す呼称として使うこともありました。
あまり知られていないことですが、例えば特定の動物と人間との融合形を「○○ケンタウロス」という名前で呼ぶこともあったのです。

このタイプの有名どころとしては、ロバ+人間の「オノケンタウロス」、魚+人間の「イクテュオケンタウロス」、竜+人間の「ドラコケンタウロス」などの名を挙げることができます。
ドラコケンタウロスはゲーム「ぷよぷよ」シリーズに登場しているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。ちなみに、この流れにおいて、従来の馬+人間のタイプをあえて「ヒッポケンタウロス(馬のケンタウロス)」と呼ぶこともあります。



●亜種・別名など
ケンタウリ/ケンタロウロイ(ケンタウロス族)/ヒッポケンタウロス(馬+人間)/ドラコケンタウロス(竜+人間)/プケンタウロス(牛+人間)/オノケンタウロス(ロバ+人間)/レオンケンタウロス(ライオン+人間)/イクテュオケンタウロス(魚+人間)/バール/ケイローン(ケンタウロスの英雄)

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