« メローMerrow | トップページ | ミカエルMichael »

2014年7月 5日 (土)

メタトロンMetatron

●天使たちの王
メタトロンはメトラトンMetratton、ミトロンMittronなどとも称される、ユダヤ教における天使たちの長です。

その地位は「天使たちのリーダー」であるミカエルやガブリエルらよりも高く、神そのものの役割を代行する権限を有します。企業で言えば、天使たちのリーダーであるミカエルが会社の経営者とすれば、メタトロンはオーナー(神)の意を受けて動く全権委任弁護士といったところでしょうか。

彼は「神の御前の君主」「7つの天の長官」「契約の天使」「奉仕天使の長」「神の顔」「天の書記」「不世出の偉大なる者」など、さまざまな呼び名を持ち、ユダヤ教典の「タルムード」によれば72の呼称を持っているとされています。

輝く顔と光る身体、36万5000個の目と36対の翼の持ち主で、「世界の広さに等しい」身長を持つ威丈夫です。
その威光は神自身を除けば誰よりも強く、天使の幽閉所である第五天を管轄し、胎児の性別を決めるという役割を有します。サンダルフォンという双子の弟もいるようです。

メタトロンという名前の由来は、「玉座に侍る者」を意味するメタトロニオスMetathroiusに由来という説と、あるいは「記録する人」「案内人」を意味するラテン語メタトールmetatorに由来する説があるようです。


●契約の天使
彼は人間と神の仲立ちをする存在であり、両者間の「契約」をつかさどります。
ここで言う契約とは、人間と神の関係についての取り交わしのことです。実際に契約を行うのは人間と神ですが、メタトロンはその間に立ち、契約内容の策定と契約書の作成を担当します。

例えば、シナイ山で取り交わされた、預言者モーセを仲介者とする契約では、イスラエル人が神を崇める代わりに、神もイスラエル人を守護する約束が取り交わされましたが、メタトロンはその成功に尽力しました。
神が地上に1000年間アダムを貸与するよう依頼した際にも、メタトロンはその書類作成と契約のすべてを取り仕切り、天使ミカエルとガブリエルが連署しています。この書類は今も天界のメタトロンの部屋に保管されているそうです。

こうして作られた「契約」は、人間たちの重要な行動指針になっていきました。それをまとめた書物が、私たちがふだん目にしている「新約聖書」「旧約聖書」などと呼ばれるものです。

ここで言う「新約」「旧約」の「約」とは神と人間の約束ということ、「新」「旧」はキリスト教徒から見て新しい時代につくられたか、古い時代に作られたかという意味です。
ユダヤ教は旧約聖書のみを「聖書」と位置づけているため、こうした区別はありません。


●モーセのボディガード
メタトロンは有名な預言者モーセの守護者としても活躍し、彼の活動を助けています。

モーセと言えば、エジプト王の迫害を避けて信徒とともにシナイ半島まで逃れた人物ですが、数々の奇跡を起こした(起こさせた)ことでも知られ、例えば、エジプト軍に追いつかれそうになったときに、海を二つに割って信徒を通した、映画「十戒」でも有名なあのシーン。一般には神の力を借りてモーセが起こしたと考えられておりますが、実はメタトロンがその演出に関わっていたという説があります。

この天使は、その後も執拗に追撃を続けてきたエジプト軍に「炎の柱」や「真っ黒な雲」を見せて足止めしており、モーセがシナイ山まで到着するのを助けています。

さらに、モーセたちは山の頂上で「十戒(十誡)」を授けられるわけですが、この十戒にもメタトロンは深く関わっています。
「あなたはわたしのほかに,なにものをも神としてはならない(第一誡)」などの有名な条文は、この天使の手によるものだとされています。


●預言者エノクとメタトロン
さて、このメタトロンはどのようにして生まれたのか……については、面白い話があります。実は、彼はもともと人間であり、天界に辿り着いたため天使へと変容させられた……と言うのです。

旧約聖書偽典に「エノク書」と言うものがあります。預言者エノクの言行の記録ですが、その中において、彼は旅の終わりに神の前まで引き立てられます。すると、見る間に彼の姿は天使とまったく変わらぬものとなったと言うのです。

メタトロンとなったエノクはそのままミカエルやラファエルら大天使の上司に就任し、同時に執筆魔だった人間時代の特性を生かして、あらゆる記録を統括する権限を得るようになりました。
そこから、メタトロンのことを「天の書記」あるいは「真実の記録者」と呼ぶようになったということです。


●キリスト教とメタトロン
さて、意外なことに、キリスト教はこのメタトロンの存在を天使としては認めておりません。
それどころか、先鋭的なことで知られているグノーシス派の間では、悪魔認定すらされているほどです。中世の絵画を見ると、メタトロンは悪魔のような二本の角を生やした姿で描かれます。

彼らが、ミカエル、ガブリエル以上に重要な天使であるにもかかわらず、キリスト教にほとんど無視されているのは、何かと敵対することの多かったユダヤ教の重要な天使だったという以上に、むしろ彼が異教の雰囲気を色濃く残した存在だったからという理由の方が大きかったからではないかと思われます。

例えば、メタトロンとゾロアスター教のミスラ神は、どちらも非常に背が高かったり、あるいは眠らず世界を監視し続けていたりするなど、かなり共通した部分を持っています。



●亜種・別名など
メトラトン/ミトロン/メタラオン

« メローMerrow | トップページ | ミカエルMichael »

キリスト教・ユダヤ教」カテゴリの記事