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2014年7月 6日 (日)

ミカエルMichael

●天使の長
ミカエルはキリスト教徒、ユダヤ教徒の双方から信仰されている、有力な天使です。あらゆる天使の中でも最高の位置を占め、神の右側に座ることの許されるただひとりの存在です。「天の副王」「御前の君主」と呼ばれることもあるようです。

天使軍の総司令であると同時に、熾天使(セラフィム、上級第一位の天使)の一角を占め、そのリーダーを務めます。同じ熾天使のガブリエル、ラファエル、ウリエルらとともに「四大天使」の名で呼ばれることもあります。

あらゆる天使を統轄する大天使長の位にあり、力天使(ヴァーチュズ、中級第二位の天使)の支配者を務め、懺悔・正義・慈悲・清め・性別・炎・東方・慎重さなど、様々な属性をつかさどります。
ヨーロッパ全域の守護天使としても活躍し、かつてヨーロッパがイスラム教徒の攻撃に晒された時は、聖ミカエルの姿を染め抜いた旗が汎ヨーロッパ軍のシンボルとして、各地で翻ったそうです。


●天使の出世頭
ミカエルという名前は、ヘブライ語で「誰が神の如き?(彼ほど神に近い者はいない)」を意味します。
この名前からも分かるように、彼はあらゆる天使の中で最も神に近い実力を持ち、その尊敬を集める存在です。

彼に匹敵する存在をあえて探すとしたら、彼の双子の兄で、天使筆頭だったこともあるルシファーの名前が挙げられましょう。
ミカエルに負けぬ風格をそなえ、神でさえもその実力を認める天界随一の天使でありましたが、性格的にやや難があり、とあることが原因で彼は天界に叛旗を翻します。

双子の兄が叛逆したわけですから、弟であるミカエルも連座してしかるべきだったのですけれども、神はその罪を問うどころか、逆にルシファーの離脱によって空席となっていた天使軍総司令に、この弟を据えるという仰天人事を行います。

ミカエルはその期待によく応えました。自らも剣を取って戦うなどよく奮戦し、兄の軍を各地で撃破して、天界側を勝利に導きます。
ルシファーは敗走し、地上へと叩き落され悪魔の王となりました。ミカエルの方はと言えば、勝利の功績により、兄の持っていた地位をすべて受け継ぐことが許され、ここに大天使長としてのミカエルが誕生します。


●ミカエルの姿
彼は絵画やステンドグラスに最もよく描かれた天使のひとりです。
単体の作品としての印象は薄くとも、神のそばに侍ったり、死者や聖者を天空から見守ったりするその姿は、誰もがきっと目にしているハズです。

彼は多くの場合、黄金の剣と光り輝く鎧を装備した姿で登場します。
この黄金の剣は彼のために「神の武器庫」からわざわざ出されたもので、どんな堅い剣でも一刀のもとに斬り落とすことができます。
鞘から抜かれた剣が彼の象徴として描かれることもあります。

羽の数については、彼の場合2枚の大きな羽で描かれることが多いのですが、同格のルシファーらが6枚、もしくは12枚以上の羽を持つことから、実際には6枚以上の羽を持つと考えるのが妥当です。

武装した姿、敵を容赦なく斬り捨てるその姿は、何か威圧感めいたものを感じさせますが、伝承などを見ると意外にも優しい性格をしていて、旧約聖書外典「エノク書」でも「めったに怒らない聖ミカエル」と書かれています。
もっとも、アダムたちに楽園追放を言い渡したり、兄を一刀のもとに斬り下ろしたりするような冷酷な面もあるのも確かなわけで、その辺りから考える限り、「優しい」と言うよりはむしろ「生真面目」なだけなのかも知れません。


●ミカエル信仰
天使は今もヨーロッパ人にとってかけがえのない存在です。私たちがことあるごとに八百万の神々へ祈りを捧げることがあるように、ヨーロッパ人は天使に祈りを捧げます。
中でもとりわけ、ミカエルは多くの人々の尊敬を集めています。毎年9月29日ごろの「聖ミカエルの日」には、各地でミカエルにちなんだ大祭が行われます。

彼の威光にあやかってその名前をつける人も多く、英語のマイケルMichael、フランス語のミシェルMichelle、ドイツ語のミヒャエル(ミハエル)Michael、ロシア語のミハイルMikhailなどは、すべてこの天使の名前にちなみます。彫刻で有名なミケランジェロMichelangeloの名前も、「天使ミカエル」を意味する言葉から来ています。

ミカエルは戦争と正義をつかさどるところから、外敵や危難、飢饉、疫病、災害などに襲われたときには、彼の名を呼ぶのが効果的です。1950年には当時の法王ピウス12世によって「警察官の守護者」に認定されました。

彼に捧げられた寺院も厖大な数にのぼり、例えばイタリア南東部、アドリア海に面したモンテサンタンジェロ(聖天使の山)修道院は、5世紀ごろにミカエルが降臨したということで、中世には南イタリアにおける一大巡礼地となりました。

同じくミカエルに捧げられたものとしては、フランスのノルマンディー地方にあるモン・サン・ミシェルMont-Saint-Michel(聖ミシェルの山)やイギリスのコーンウォール地方にあるセント・マイケルズ・マウント(聖マイケルの山)などが有名です。
これらの修道院は寺院としての役割のほかに、外敵が攻め入ったときの戦略拠点としても使われました。



●亜種・別名など
ミハイール

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