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2014年7月 6日 (日)

モロクMoloch

●残酷な悪魔
モロクはモレクMorech、メレクMerekの名前でも呼ばれる悪魔です。
特に残忍な性格をしていることで知られ、強大な力を持ち、ユダヤ人にとっては誰よりも許されざる存在のひとりです。「地獄の辞典」を著した作家コラン・ド・プランシーによれば、彼は涙の国の君主であり、地獄会議のメンバーのひとりとされています。

もともとはアモン人(ヨルダン東部地域の住民)の間で信じられた強力な神で、その名前も「王」を意味するヘブライ語に由来します。
シナイ半島からイスラエルに渡る地域で特に信仰を集め、その姿はしばしばブロンズの王座に座る、王冠を被った牛頭の神の形で描かれます。


●生け贄を好む神
彼がユダヤ人から不倶戴天の敵とされたのは、彼が異国人の神であるという以上に、生け贄を好むきわめて残酷な性格の神であったという部分が影響しています。
彼は国王に力を与える代わりに、その王権を継ぐ者、つまり王の長男の生命を要求したのです。

エルサレム近郊で行われる儀式では、シンバルやトランペット、太鼓などが盛大に打ち鳴らされ、親たちは子供を劫火の中に放り込みました。
子供たちは当然泣き叫びますが、それも周囲の大音響の中にかき消され、やがて炎のはぜる音のみが聞こえるだけとなりました。

神殿から立ち上る炎は、儀式のまがまがしさとあいまって不気味なイメージをかもし出し、特にユダヤ人にとって忘れられないトラウマの地となりました。
生け贄の習慣がなくなった後も、この神殿のあるゲヘナ地方はしばらくゴミ捨て場や墓場の代わりとして使われ、そこから立ち上る異様な煙と臭いは、ユダヤ人にとって地獄を想起させるのに充分なほどであったと言います。
地獄の劫火を「ゲヘナの火」と呼ぶようになったのも、このイメージが大きく影響しています。

アモン人が力を失い、ユダヤ人がこの地方を支配するようになっても、この儀式はしばらく続けられたそうで、イスラエル王アハズやマナセなども、自分の子供をモロクへ生け贄に捧げたと言います。


●ユダヤの敵、キリストの敵
当然、ヤハウェ信仰が広まる中で、モロクは許し難い悪魔のひとりとみなされるようになります。
ジョン・ミルトンも、著書「失楽園」の中で、彼を「母親の涙と子供の血にまみれた」魔神であると書いています。高位の悪魔に肯定的な評価を残しているミルトンにしては、かなり辛辣であると言わざるを得ません。

ユダヤのラビ(律法学者)は、ゲヘナの中心にモロクの巨大な像があると考え、その形を次のように考えました。

材質は真鍮で、両手を拡げたような姿をしており、頭は巨大な牝羊の形をしています。中身は七つの部屋に分かれていて、一つ目の部屋には小麦粉が、二つめにはキジバトがそれぞれ収納され、三つ目には牝羊、四つ目には牡山羊、五つ目には子牛、六つ目には牡牛、そして七つ目には子供が置かれます。

焚き口からは常に燃料が補給され、それが内部を常に高温に保ちます。像と言うよりはむしろ焼却炉に近いものであり、それぞれの部屋に覗き口があって、そこから内部の様子をうかがい知ることができます。

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