« ナベリウスNaberius | トップページ | 鬼Oni »

2014年7月 6日 (日)

原初の神々Original first pantheon

●はじめに混沌(カオス)ありき
ギリシア神話の始まりは、はっきりしていません。
別に「混沌(カオス)」がいたから、というわけではなく、語る者によってさまざまな原初の神々が提唱されており、その内容は微妙に違ってきているからです。

詩人のヘシオドスによれば、まず世界に「混沌(カオス)」ありき、でした。漠として暗かった、と言います。


●神々の誕生
そこに、大地母神「ガイア(大地)」が現れます。同時に、「タルタロス(冥界)」「ニュクス(夜)」「エレボス(暗黒)」「エロス(心を和らげる愛:アフロディテの息子のエロスとは別人)」が生まれました。

ニュクスからは「モロス(運命)」「モイラ(悪霊)」「死」が誕生し、「大洋」の向こうの黄金のリンゴを守るヘスペリスを生み落とします。
さらに「モーモス(歓喜)」と「オイズス(悲惨)」、運命を紡ぐ三姉妹モイライ(ラケシス、クロト、アトロポス)を生じ、この三姉妹は人間が生まれると、彼らの運命をつかさどるようになりました。
次いで、夜とともに活動する「ヒュプノス(眠り)」や「オネイロス(夢)」が生まれます。

ニュクスはまた、復讐の女神ネメシスと、争いの女神エリス、ほか「欺瞞」「不節制」「老年」を生み、エリスは「悲しみ」「忘却」「飢え」「闘争」「殺人」「戦闘」「虐殺」「喧嘩」「嘘」「ごまかし」「不正」「呪い」などを生みました。
さらに、エロスの仲介で、ニュクスとエレボスが結びつき、「アイテール(光)」と「ヘメラ(昼間)」が生まれます。


●ガイアとその子供たち
大地母神ガイアも活動を始めます。
まず最初に「ウラノス(天空)」を生み、自分の身体をそれで覆わせます。次に、高い山々と、「ポントス(海洋)」を生みます。

そして、自分の息子ウラノスを夫として、次々と神々を生んでいきます。
まず、オケアノス(大海)、コイオス、クレイオス、ヒュペリオン、イアペトス、クロノスの男性神、テイア、レア、テミス、ムネモシュネ、ポイベ、テテュス、ディオーネの女性神を生み出しました。

さらに、コットス(怒り)、プリアレオス(活力)、ギュエス(大きな手足を持つ者)のヘカトンケイル族、プロンテス(雷鳴)、ステロペス(電光)、アルゲス(閃光)のキュクロプス族などを生みます。

また、同時に、息子ポントスと交じり、誠実なネレウス、怪物タウマス、剛勇なポルキュス、愛らしい頬をしたケト、鋼の心臓を持つエウリュビアを生みます。
これらの兄弟姉妹は、併せて「ティタン神族」と呼ばれました。「ティタン」とはクレタ島の言葉で「王」を意味する言葉です。

ギリシアでは、ティタン神族は人間の先祖として讃えられました。技術や魔法の発明はこれらの神々の手によるものだとされています。


●ガイアの復讐
しかし、ヘカトンケイルやキュクロプス族は、巨人だった上に、ヘカトンケイルが100の腕と50箇の頭を持っており、キュクロプスは一つ眼だったため、ウラノスに恐れられました。
そして彼は、大地の奥深くのタルタロスに、巨大な息子たちを閉じ込めてしまったのです。

それにショックを受けたガイアは、初め嘆き、次に腹を立て、夫に対して復讐を企てます。
彼女は胸からきらめく綱を取り出し、鋭い鎌形刀(ハルペー)を作ります。そして、恐るべき計画を口にしました。

誰もが尻込みする中、手を挙げたのは末弟のクロノスでした。
夜になって、ウラノスが妻と過ごすため、ニュクス(夜)を従えてガイアの館にやってくると、潜んでいたクロノスは突然飛び出し、その性器を切り取ってしまいました。
そして、血まみれのものを海に投げ捨てます。

ウラノスの傷口からは黒い血がしたたり落ち、大地に染みこんで、「怒りの女神たち(エリニュス)」「巨人たち(ギガース)」「トネリコの妖精(ニンフ)メリアス」たちを生みます。
また、海に投げ込まれた性器は、崩れて白く泡立ち、やがて美と愛の女神アプロティテを生み出します。

ウラノスは去勢されたことにより、その力を失い、神々の王の座から引きずり下ろされます。代わって登極したのは、ガイアに唯一味方したクロノスでした。


●ティタン神族たち
ティタン神族たちによる「天地創造」は、クロノスが天下を取った後も続きました。

オケアノスとテテュスの間には3000の息子たち、すなわち「河川」と、3000の娘たち、すなわち「水の妖精(ニンフ)」が生まれ、次いでメティス(知恵)、テュケ(幸運)、ステュクス(地獄の河)が生まれました。

娘の一部は叔父たちに嫁ぎ、たとえばドリスとネレウスの間には50人の娘たち、すなわちネレイスたちが生まれ、エレクトラとタウマスの間にはイリス(虹)と美しい巻き毛のハルピュイアが誕生します。

女神ケトは兄弟神ポルキュスを夫とし、生まれた時から白髪のグライアイ(老婆)を生み、さらには大洋の彼方ヘスペリス族の国に棲んだゴルゴン三姉妹を生みます。

ヒュペリオンとテイアの間には「ヘリオス(太陽)」「セレネ(月)」「エオス(曙)」が生まれ、コイオスとポイペの間には、のちにアポロンとアルテミスの親となるレトと、その生む場所となったアステリアが生じます。

クレイオスとエウリュビアの間にはアストライオス、パラス、ペルセスが生まれ、イアペトスはオケアノスの娘クリュメネ(一説にはアシア)を妻として、プロメテウス、エピメテウス、アトラス、メノイティオスをもうけ、最後にクロノスとレアは、ヘスティア、デメテル、ヘラと、ハーデス、ポセイドン、ゼウスを子供として授かりました。


●クロノスの乱心
クロノスは、神託によって、「その子供に自分の地位を奪われるだろう」と言われていました。
そのため、生まれたばかりのヘスティアをはじめ、デメテル、ヘラ、ハーデス、ポセイドンをどんどん呑み込んでしまいました。

クロノスの妻レアは、悲しみ打ちひしがれ、祖父母であるウラノスとガイアに「何とかして欲しい」と懇願しました。

二人は、それを聞くと、「クレタ島のアンガイオンの洞窟で最後の子供を産むが良い。そして、クロノスには大きな石を産着に包んで呑み込ませるといい」と助言しました。
レアはそれに従って、アンガイオンの洞窟でゼウスを生み落とすと、ガイアにそれを預けました。そしてレアは、言われた通り、大きな石を産着でくるみ、クロノスにそれを差し出します。クロノスは嬉々としてそれを呑み込んでしまいました。

一方、ゼウスはと言うと、ガイアの手でイデ山(またはデクテ山)に連れてゆかれ、二人の妖精(ニンフ)、アドラステイアとクレタ王メリッセウスの娘イデに預けられます。
二人はかいがいしく彼を育て、黄金のゆりかごやまりを作ったり、あるいは赤ん坊の泣き声がクロノスの耳に入らないよう、剣で青銅の盾を打ち鳴らし、ゆりかごの周りで戦の舞を踊りました。


●ティタノマキア
こうして生み落とされた幼いゼウスは、その後山羊(妖精=ニンフという説もあり)のアマルテイアの手により育てられます。アマルテイアはその後功績をたたえられて山羊座になりました。

やがてゼウスは成人すると、父クロノスに復讐する計画を立て始めます。
そして、タルタロスに閉じ込められていたヘカトンケイル族とキュクロプス族を解放すると、次にオケアノスの娘メティスの作った薬を使って、クロノスから兄姉神たちをはき出させます。

こうして、クロノスらティタン神族と、のちにオリュンポス神族と呼ばれるゼウスたちの戦いが始まります。

この戦いは「ティタノマキア」と呼ばれました。
キュクロプス族はゼウスに雷霆(らいてい)と電光を贈り、ヘカトンケイル族はその豪腕をふるって、オリュンポス神族側に味方しました。この戦いは10年も続きましたが、威力に勝るゼウス側が最終的に勝利をものにし、ここに戦争は終結します。

そして、クロノスに代わってゼウスが天空および地上を支配することになり、ウラノス、クロノスに続く三代目の神々の王の座に就くことになります。


●ギガントマキア
ところが、ティタン族との戦いを終えたところで、ゼウスはまた戦いを挑まれました。
今度の敵はギガース、つまりウラノスの血が大地、すなわちガイアにしたたって生まれた巨人族です。この戦いを「ギガントマキア」と呼びます。

彼らは際立って巨大というだけでなく、脛(すね)は蛇に似て、足はとかげの頭からなっていました。彼らは大地から現れた時、きらめく甲冑を着け、巨大な槍を握っていました。

彼らは山々を持ち上げてはぶん投げるなど、大変な怪力を発揮してオリュンポス神族を苦しめます。しかし、「人間の協力によって勝てるであろう」という神託の通り、人間の勇者、つまりヘラクレスの協力によって、趨勢はオリュンポス神族の方に動きます。

ヘラクレスはまず、大地と接している間は不死身と言われたアルキュオネウスを、地面から持ち上げることで打ち倒します。
そして、アルキュオネウスの兄弟であるポルピュリオンは、ゼウスによってヘラへの情欲を吹き込まれ、彼女を追いかけているところへ、ヘラクレスによって矢を射かけられて討ち果たされました。

パラスやエンケラドスはアテナに挑戦しようとしましたが果たせず、次々と討ち果たされ、パラスは皮を剥ぎ取られて彼女の盾(アイギス)を飾り、エンケラドスはシチリア島の下に埋められてしまいました。
そして、今でも、この巨人が寝返りをうつ時、シチリア島は大きく揺れるのだそうです。


●最後の戦い
ガイアはそれでも、自分の子供たちの敗北が受け入れられず、今度はタルタロスと交わって生んだ怪物テュポン(テュポーエウス)をけしかけます。

その怪物は、「休みなく働く手と、止まることを知らない足」を持つ恐るべき怪獣でした。肩からは100の恐ろしい竜の頭が生え、それぞれに黒い下が突きだし、目は焔(ほのお)を吹いていました。
腿(もも)からは無数の毒蛇が這い出し、身体は羽毛で覆われ、厚い剛毛が頭や頬に生えていました。背丈はあらゆる山よりも高かったと言います。

神々はその姿を見て恐れおののき、エジプトまで逃げてしまいました。ただひとり、ゼウスだけがこの怪物の前に立ちはだかりますが、彼は蛇にがんじがらめに締め付けられ、足の腱を切られて、キリキア(小アジアの一地方)にある怪物の巣の中に閉じ込められます。

しかし、ゼウスの子で伝令の神であるヘルメスの活躍によって助け出され、戦いは再開されます。
結局、雷霆(らいてい)を持っていたゼウスがテュポンを圧倒し、怪物はシチリア島に逃れますが、ゼウスはその隙を逃さずエトナ火山で押しつぶしてしまいました。

こうして、三度の戦いに勝ったゼウスは、神々の長としての地位を不動のものにします。

« ナベリウスNaberius | トップページ | 鬼Oni »

ギリシア神話の神々」カテゴリの記事