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2014年7月 6日 (日)

サラマンダーSalamander

●火の精霊
サラマンダーは中世の錬金術師パラケルススが、著書「妖精の書」で言及した精霊です。
地水火風の属性のうち「火」をつかさどり、「四大精霊」のひとつにも数えられます。炎の中で自在に動くことができる反面、この炎から離れて生きることはできません。
しばしば「火トカゲ」の名前で呼ばれることもあります。


●サラマンダーと山椒魚
もともとは、トカゲではなく山椒魚を差していたらしく、サラマンダーという名前も、ラテン語で「山椒魚」を意味するサラマンドラSalamandraに由来するものです。

おとなしい両生類が火の象徴というのも奇妙な話ですが、古代ローマ時代、この動物は氷のように冷たく、火に触れるだけで溶けると考えられていたのです。
恐らくは水辺に多く棲み、身体が粘液でヌラヌラと常に濡れていることからの連想でありましょう。

その「火に弱い」ハズの山椒魚は、同じく古代ローマ時代に存在した(と考えられた)有翼の火トカゲ「ピュラリス」のイメージと次第にごっちゃにされて、何故か火に強いトカゲと考えられるようになります。
トカゲの仲間には、火に放り込むと体液を分泌して体温を下げようとするものがあります。

いずれにしても、はっきりしていることは、パラケルススが指摘する遙か前から、このような「火に強いトカゲ」の存在が指摘され、その生態が考えられてきたと言うことです。


●サラマンダーと錬金術
この動物は、錬金術に欠かせぬ「火」をつかさどることから、錬金術そのものの象徴と見なされました。
ゆえに、巷間の錬金術師たちはこぞってこの奇妙な「火トカゲ」を崇め、奉り、その存在を信じてきたのです。

実在を疑わぬ人も多く、イタリアの彫金師チェリーニや、アイルランドのノーベル賞詩人W・B・イェイツのように、実際に「サラマンダーを見た!」と主張する人も少なくありません。
ちなみに、イェイツは20世紀まで生きた人物です。アイルランドの独立運動にも参画しています。

実在が信じられた根拠の一つは、「サラマンダーの皮」と称するものがヨーロッパじゅうに広く出回ったことによるものです。

この皮は、まるで綿のように柔らかいのに、火にかけても燃えるどころか焦げすらつきません。
もちろん、その正体は精霊の皮でも何でもなく、今話題の石綿(アスベスト)の布に過ぎないわけですが、人々はそんな無味乾燥な真実より、火を食べて熱に強くなったトカゲの皮だ、あるいは火の糸を紡いで作った炎の布だ、というロマンチックな伝説の方を信じました。

江戸期の日本にも、しばしばこの「サラマンダーの皮」が持ち込まれたようで、発明家・平賀源内はこの不思議な布に「火浣布(かかんふ)」という名前をつけています。「火で浣(あら)う布」の意味です。


●サラマンダーの外見
サラマンダーの外見は伝承によってさまざまです。これは、広い地域で多くの人に語り継がれてきたためだと考えられています。

一般的には、「火トカゲ」の名にあるように炎に包まれるトカゲの形と言われておりますが、人間の姿を取るとするものも多く、ヨーロッパの民話ではしばしば「女性」の姿で描かれます。
炎→情熱的→女性という連想によるものでしょうか。なお、情熱的な女性は死ぬとすべてサラマンダーになるという説もあります。

ゲームを含む現在は、ほとんどの場合、男性の形で描かれるようです。
こちらは炎→燃える→攻撃的→男(漢)のイメージでしょう。アラビアの魔神イフリートのイメージも、もしかすると影響しているかも知れません。


●エンターテイメント作品に見るサラマンダー
サラマンダーは四大精霊という属性のゆえか、敵役として、あるいは魔法の源泉として、多くのエンターテイメント作品にその名前が登場します。
ただ、同じ炎系の精霊であるアラビアのイフリートと混同されやすいのも彼らの特徴で、地のノーム、水のウィンディーネ、風のシルフといった部分は共通しているのに、なぜか火の精霊のみイフリートに置き換えられているといった作品もしばしば見かけます。



●亜種・別名など
サラマンドラ/サラマンドル/火トカゲ/ピュラリス/ヴァルカン/ファイア・エレメンタル(火の精霊)

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