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2014年7月 6日 (日)

スキュラSkylla

●ギリシア神話の怪物
スキュラ(スキュレー)はギリシア神話に登場する不死の怪物です。

シチリア島とイタリア半島の間にあるメッシナ海峡の洞窟に棲むと言われ、そこを通りかかるイルカやアザラシ、ポセイドンの妻アムピトリテの飼っているペットの怪物、果ては人間の船員までをも餌食にし、おまけに同じ海峡には大渦を巻き起こす怪物カリュブディスまでも棲んでいたため、メッシナ海峡はシチリア海最大の難所として恐れられていました。

彼女はテュポンとエキドナの子供とも、ポルキュス(ガイアの子)と女神クラタイイスの子供とも言われます。
その姿は上半身が美しい女性、下半身が六箇の長い頭とあごを持つ犬の頭と十二本の足という異形な姿です。
しかも、その犬の口には、サメのように、三列にぎっしりと歯が並んでいます。この他にも、下半身は六匹の犬であるとも、六つの頭でできた帯をしているとも言われます。

彼女の名前はギリシア語で「犬の子」ないし「引き裂くもの」「すさまじいもの」を意味する言葉から来ています。


●スキュラが怪物になった理由
スキュラが怪物になった理由は以下の通りとされています。

オウィディウスの「変身物語」によれば、彼女は女神クラタイイスの娘であり、水のニンフ(妖精)でした。しかし、海神グラウコスの求愛を受け、逃げ出してしまいます。

グラウコスは諦めきれず、友人の魔女キルケーに相談して媚薬を作ってもらうよう頼みました。しかし、キルケーはグラウコスのことを愛していたので、嫉妬心から、怪物になる薬を作ったのです。そして、スキュラがよく沐浴する池に流し込みました。

何も知らないスキュラは、いつものように沐浴しようと池に入り込みました。すると、またたく間に下半身が怪物へと代わってしまったのです。

彼女は怪物が現れたと思って逃げ出しますが、その怪物が自分の下半身のことだと分かると、絶望して海に出て、岩陰に身を潜めます。
しかし、下半身は怪物となってメッシナ海峡に現れ、そこを通る者を次々と餌食にしていったということです。


●「オデュッセイア」のスキュラ
ホメロスの「オデュッセイア」では、彼女はメッシナ海峡に棲む怪物として描かれています。

トロイア戦争から帰る途中、神々の策謀によってさまざまに遍歴を重ねることになった英雄オデュッセウスは、偶然メッシナ海峡を通ることになります。

この海峡にはカリュブディスとスキュラが棲んでいることを、他の船乗りから聞いていた彼は、真ん中を通れば襲われない、ということを聞きつけ、船をその方向へと進ませますが、幅が広い船なのでどちらかに寄らねば進むことができないことを知り、愕然とします。

そこで、彼はスキュラのいる方向へと船を進めます。
カリュブディスのいる大渦に巻き込まれると船そのものが壊れますが、スキュラならば最大で6人の仲間を犠牲にすれば、船そのものには傷がつかないからです。

果たして、スキュラの前を通りかかった時、彼女の6本の首はみるみるうちに伸びて6人の仲間をさらいますが、オデュッセウスはその間に船を先に進ませました。
スキュラはそれでもなお満足せず、再び一行に襲いかかりますが、オデュッセウスは2本の首を切り落として、何とかこの難所を切り抜けます。


●その他の話
これらの話の他にも、ヘラクレスの「十二の難業」のうち、「ゲリュオンの牛」において、彼が盗んだ牛の一匹をスキュラが食べたため、彼の強弓によって退治されたという話が残っています。この時は、彼女の父ポルキュスによって蘇生されました。

また、アルゴ探検隊がこの海峡を通ったという話もありますが、どうやって通ったのかはよく分かっていません。

やがて彼女は岩に姿を変えられました。

中世に入ると、スキュラは動物寓話集に海の怪物として挙げられるようになります。それによれば、彼女の上半身は美しい女性ですが、下半身は狼の身体とイルカの尾で構成されているそうです。


●スキュラの象徴するもの
スキュラはメッシナ海峡の岩礁を象徴し、カリュブディスは同海峡の潮流を象徴していると言います。
オデュッセウスがスキュラのいる側を選んだというのは、彼の乗った船が、すなわち死を意味する潮流に巻き込まれるよりも、最悪でも船に穴が開くだけで済む岩礁地帯を選んだということなのでしょう。

ちなみに、スキュラとカリュブディスの真ん中を通れば無事であることから、しばしば両者は「中立」「中庸」を象徴することもあります。



●亜種・別名など
スキュレー

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