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2014年7月 6日 (日)

スフィンクスSphinx

●人面獅子身の怪物
スフィンクスはエジプトの怪物です。
顔が女性、身体がライオンで、背中に鷲の大きな翼を生やしています。歴史に少しでも興味のある人なら、ギザの沙漠に鎮座ましましている石像の姿を思い出すのではないでしょうか。

スフィンクスの像はギザだけでなく、各地に存在しますが、「彼女」が何ゆえにこのような姿になり、沙漠の真ん中に作られていたのかは、あまりよく分かっていません。
恐らくは当時の王や土着の神々を模したものだと思われておりますが、その建築時期、建築過程も含めて謎とされる部分は多いのです。

時期については、ピラミッドと同時期に作られたという説が有力ですが、それよりも古い時代(8000~12000年前)に作られたと言う人もいます。


●伝承の中のスフィンクス
スフィンクスという名前は「きつく縛る」「絞め殺す者」を意味するギリシア語スピンクスsphink、Sphinxに由来すると考えられています。

恐らくはギリシア神話に登場するスフィンクスのイメージによるものだと思われますが、古代エジプト語の「生ける彫像」を意味する「シェスプ・アンク」に由来するという説もあります。

エジプトではこの怪物は太陽の神ホルスの一面であると考えられ、「ホル・エン・アケト(地平のホルス、墓場のホルス)」「ホル・アクティ(地上のホルス)」などと呼ばれました。他に「ルウティ」などの呼び名もあります。

この怪物の伝承はエジプトを含む中東一帯、そしてギリシアにまで及んでいて、エジプトでは古くから王権のシンボルであり、知恵と力の象徴であり続けました。

人間とライオンと鷲というキマイラ(複合怪物)のような姿をしているのは、恐らく当時崇拝されたものを何らかの理由で一緒にしたものでありましょう。

私たちが知るような姿はメソポタミア(現在のイラク、シリア)で考えられたものです。
ちなみにメソポタミア以外では、人間の頭を持たないタイプもしばしばいて、例えばエジプト中部のカルナック神殿跡では、人間の頭の代わりにヒツジの頭を持つ像が発見されています。

バビロニア神話では光の神マルドゥークに退治される存在としての役割が与えられており、アラビアでは「アブ・ホル(恐怖の父)」などと呼ばれて大変恐れられました。


●ギリシア神話のスフィンクス
しかし、スフィンクスと言えば何と言ってもギリシア神話のスフィンクス伝説に尽きます。

テュポン(またはオルトロス)とエキドナの間に生まれた「彼女」は、自然の女神ヘラの命令でテーベ(現在のエジプト中部の都市テーバイ)にやって来ます。そして、小高い丘の上に陣取り、謎かけをして、答えられないテーベの民や旅人を懲らしめるようになりました。

その謎かけとは「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足で歩く者とは、誰のことか?」というもの。テーベの王もこれに挑戦しますが、結局答えられずに殺されてしまいます。それゆえ、テーベの街では長らく王不在の時代が続きました。

そこに、勇敢な若者オイディプスが通りかかります。スフィンクスはその前に立ちはだかり、同じ謎かけを問いかけました。聡明なオイディプスは直ちに
「それは、人間だ」
とずばり答えます。
実はそれが正解で、スフィンクスは恥ずかしさのあまり、丘の上から身を投げ出して死んでしまいました。

なぜ人間が正解なのかと言うと、人生の朝……つまり赤ん坊の時には四つんばいで這い回るから4本足。
人生の昼……つまり若い時は2本の足でしっかり歩くから2本足。
人生の夜……つまり老人の時には杖をついて歩くようになるので3本足、というわけです。

テーベの街はこの結果に大いに沸き返り、勇敢なその若者を新たな王として迎えました。彼は後年、別の悲劇的な物語の主人公となりますが、それはまた別の話となります。


●博物誌に見るスフィンクス
この怪物は歴史書や博物誌にも登場します。

古代ギリシアの歴史家ヘロドトスは、著書「歴史」の中でアンドロスフィンクスAndrosphinx(人頭スフィンクス)と言う怪物の存在について言及しており、他に「クリオスフィンクスCriosphinx(羊頭スフィンクス)」「ヒエラコスフィンクスHieracosphinx(鷲頭スフィンクス)」など、人間以外の頭を持つスフィンクスがいると述べています。
このことから、ヘロドトスの時代(紀元前5世紀ごろ)には、スフィンクスという名前が単なる人頭獅子身の怪物ではなく、それ以外の頭を持つ怪物に使われていたことが分かります。

古代ローマの博物学者プリニウスも「博物誌」の中で、エチオピア(現在のアフリカ北東部一帯)に棲む怪物としてスフィンクスの名前を挙げています。
「毛が褐色で一対の乳房」を持つ女の怪物として描かれており、その姿は有名なドミニク・アングルの「オイディプスとスフィンクス」の絵にも描かれています。


●スフィンクスの象徴するもの
彼女は王権の象徴であり、知恵と力を表わすものだということはさきに少し触れましたが、一説には悪疫(疫病)を象徴するとも言われ、オイディプスのスフィンクス退治譚はそうした状況を物語にしたものだと考えられています。

王を含め、住民や旅人が次々と喰い殺されたのは、病気(恐らくは天然痘)が流行り、地位の区別なくばたばたと人々が死んでいったことを示すもの。
オイディプスがそれを退治したと言うのは、彼が王に就任してすぐに、的確な防疫対策を施したという部分を表わしたものです。

中世には肉体的な快楽や娼婦を象徴し、また人間と動物のキマイラという姿から知性と体力、精神と物質と言った二重の性質の統一を表します。
また、人間自身を答えとする謎かけのイメージから「人生の謎」「永遠に解けない究極の謎」を象徴することもあるようです。



●亜種・別名など
スピンクス/アンドロスフィンクス/ヒエラコスフィンクス/クリオスフィンクス/ルウティ/シェスプ・アンク/ホル・エン・アケト/ホル・アクティ/アブ・ホル

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