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2014年7月 6日 (日)

ユニコーンUnicorn

●聖なる一角獣
ユニコーンは「一本(ユニ)の角(コーン)」を意味する言葉で、主に大きな一本の角を持つ動物・幻獣を差す総称です。「一角獣」の名前で呼ばれることもあります。

人魚(マーメイド)と並んで近年までその実在が信じられた動物で、つい最近まで、「ユニコーンの角」と称するものが店先に並べられたこともありました。

ユニコーンの姿については、いろんな伝承によってさまざまなかたちが伝えられていますが、有名なのは馬のようなユニコーンでしょう。

美しい毛並みと凛々しい表情をそなえ、頭の中央に、まるで槍のような立派な角を生やしています。性格は高邁で、孤高を保ち、人間たちを嫌って普段は森の奥に潜んでいます。
ただ、処女に対してだけは心を許すと言われていて、無垢な乙女がユニコーンとくつろぐ姿は、しばしば絵画のモチーフにもなっています。


●ユニコーンの起源
ユニコーンが初めて文献に表れたのは、古代ギリシアの歴史家クテシアスの「インド誌」であると言われています。
その中に、「胴全体が白く、頭は緋色、目は紺色で額に長い角を生やしたロバ」に関する記述があります。アリストテレスはそこからこの動物を「インドロバ」と呼びました。実際はサイや水牛などを描写したものではないかと考えられています。

古代ローマの博物学者プリニウスもこの幻獣の存在を信じていて、著書「博物誌」の中で次のように紹介しています。

「最も獰猛な動物は一角獣(ユニコーン)で、これは胴体は馬に似ているが、頭は牡鹿、足は象、尾は猪に近い。
太い唸り声をあげ、一本の黒い角が額の真ん中から2キュービット(約1メートル)突き出している。この動物を生け捕りにするのは不可能だといわれる」


●ユニコーンの正体
これらの「一角獣」が何を表しているのかについては、昔から論議の的になってきました。
サイであるという説、牛を横から見ただけという説、「2本角」という言葉を間違って「1本角」に訳してしまったという説……。

中世になるとしばしばヨーロッパに「ユニコーンの角」と称するものが持ち込まれて、高値で取り引きされました。
その正体はサイの角を切り取ったものであったり、あるいは北氷洋に棲息するイッカク(イッカククジラ)の角であった可能性が高いようです。

特にイッカクの角は長くねじれていて立派だったため、人気がありました。
ちなみに言うと、イッカクの角は、厳密に言えば本物の角(頭蓋骨や頭皮が角質化したもの)ではなく、門歯(前歯)が頭の皮膚を突き破って前方に張り出したものです。


●ユニコーンの伝承
一般に通用しているユニコーン=馬というイメージは、結構後の時代になって固まったものです。それまでは、さまざまな動物のタイプの「ユニコーン」が存在しておりました。
ラバや象であるとする人もいましたし、山羊に似た動物であるとする人もいます。プリニウスの「博物誌」では、さきの記述にもあるように、さまざまな動物の集まったキメラ(キマイラ)だとしています。

動物に関する話を集めた中世の「フィシオロゴス(動物寓話譚)」は「一角獣は小さい動物で、子山羊くらいだが途方もない勇気の持ち主であり、ひどく力があるため、狩人も近づくことができない」と述べています。

また、中世の伝承によれば、彼らはきわめて誇り高いので、人間に飼われることをよしとしないと言います。
追い込まれると崖の上から身を投げてでも逃げようとしますし(その際、角をうまく使ってショックを和らげます)、万が一捕らえられても、悲しみのあまりすぐに死んでしまいます。

そんなユニコーンを唯一、捕らえる方法があるのをご存知でしょうか。
美しく装った処女を用意して、彼女を野原にひとりで残すと、森の奧からユニコーンがやってきて、処女に寄り添います。そして、しばらくすると処女の膝の上に頭を載せて眠り込むので、その隙に捕まえるのです。

ただ、その処女が偽物、つまり非処女であることが分かった場合は、激しく怒り狂い、その女性を八つ裂きにして殺してしまうそうです。


●ユニコーンの角
古くからユニコーンの角は解毒の特効薬として認識されてきました。
ユニコーンを紹介したクテシアスは、その角に限りない薬効があることを認めていて、「インド人は毒を注ぐとたちまちに割れる酒杯をユニコーンの角で造っていて、これを使用している者は決して痙攣(けいれん)や癲癇(てんかん)になることはない」と著書「インド誌」の中で述べています。

フランス王シャルル9世やベリー公ジャンなどは毒殺を防ぐために、杯の中にユニコーンの角を入れることを奨励しました。また、有名なサンドニ大寺院の井戸にはこの角が浸されており、ゆえにその水は病人を治す力があると信じられたそうです。

「フィシオロゴス(動物寓意譚)」の中にも、こうしたユニコーンの角に関する話が所収されています。
動物たちが水を飲みに来ようとすると、どこからか蛇がやってきて水の中に毒をまき散らします。しかし、ユニコーンがひとたび角で十字を切れば、水は完全に浄化され、再び飲めるようになるのだそうです。


●ユニコーンの象徴するもの
ユニコーンは姿の美しさから、古今さまざまな国や個人の紋章として使われました。
特に有名なのはスコットランド王国でありましょう。ゆえに、今のイギリスの紋章には、イングランド王国のライオンと並んで、スコットランドのユニコーンの姿が描かれています。
また、スコットランド王の居城として使われたエディンバラ城には、現在もユニコーンの紋章が燦然と翻っています。

キリスト教では処女にのみ心を許すという伝説から純潔性、処女性を象徴すると考えられ、時にイエス・キリスト自身を表すこともありました。
また、純潔を守り、ひとり孤独な生活を強いられることから「修道院の生活」を象徴することもあるようです。

また、勇気・威厳・高貴などさまざまな性質を併せ持つと言うことで、「絶対専制君主制」の象徴と考える人もいます。



●亜種・別名など
モノケロス(ラテン語)/ウォーター・ユニコーン(水棲ユニコーン)

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