怪物一般

2014年7月 6日 (日)

ワイバーンWyvern

●ヨーロッパのドラゴン
ワイバーン(ワイヴァーン)はヨーロッパの伝承に登場するドラゴンの一種です。
その名前は「クサリヘビ」を意味する言葉から来ていると言われ、一説には、フランスのドラゴンであるヴイーヴルがイギリスに渡って変容したものと考えられています。

ワイバーンはフランスやイギリスの動物寓意譚によく登場し、その姿は頭がドラゴン、身体はヘビ、翼はコウモリで、2本の足を持ち、尻尾はモリのように尖っているとも、トゲが生えているとも言われています。

普段は陸の上に住んでいますが、湖にも現れることがあると言われ、その場合は足に水かきが生えています。
食性は肉食で、出合ったものは何でも滅ぼすとも言われています。

中世以降にはその雄々しい姿から、しばしば紋章のモチーフにも採り入れられました。ちなみに紋章学では「敵意」を表すともされています。



●亜種・別名など
ワイヴァーン

ワームWorm

●イングランドのドラゴン
ワームはイングランドのドラゴンの名前です。
その名は中世ノルウェー語で「蛇」ないし「ドラゴン」を意味する言葉から来ているとも言われますが、はっきりとは分かっていません。
主にヴァイキングが住んでいたイギリス北部・東部地方でその実在が信じられました。

その名前からも想像できるように、ドラゴンとは言っても、無翼、無肢の蛇のような身体をしています。
時に角を持っていたり、目や牙が突き出ていたりするものもあるようです。
口からは炎や悪臭を放ち、身体を斬られてもすぐに元通りになる性質を持っています。あるいは、槍をも受け付けない硬い鱗に覆われているという説もあります。


●邪悪なドラゴン
ワームの性質は邪悪で、常に悪意を持っています。
驚くべきスピードで動くことができますが、他のドラゴンにあるような超自然的な力はほとんどありません。英雄にいともあっさりに退治されるのは、たいていこのワームです。

普段は悪臭を放つ沼地やじめじめした湿地に棲み、通りがかる者を襲って呑み込もうとします。また、湖や川、海へ棲む者もあるようです。


●ラムトンのワーム
ワーム伝説の中で有名なのは、「ラムトン(ランプトン)のワーム」と呼ばれるものでしょう。

ある日、ラムトンという若い郷士が、川で釣りをしていたところ、小さく奇妙で、手も足もない、不思議な虫のものを捕まえました。
「何だこれは?」と思いましたが、大したもののように思えません。若者は無造作に、その辺の井戸へ投げ捨てました。

やがて若者は成長し、十字軍遠征に参加します。戦い終えて故郷に帰って見たものは、あの奇妙な虫がワームとなって巨大化し、周辺の村々や家畜を襲い、暴れ回っている姿でした。
「これは放っておけない」と、ラムトンはワーム退治を決意します。

いざ剣を構えてワームに斬りつけますが、そのそばから、ワームの傷がみるみるうちに治ってゆきます。
これは一筋縄ではいかない、と悟ったラムトンは、魔女の助言から、はりねずみのような刃をつけた鎖かたびらを作らせます。そして、それを着てワームの棲む川へと向かいます。

角笛を吹くと、ワームはすぐさま襲ってきました。そして、若者をその身体で縛り上げようとします。
ところが、全身につけられた刃によって、ワームの身体は逆に切り刻まれてしまいました。やがてワームは自己修復能力を発揮することができず、死んでしまいます。



●亜種・別名など
ウィーウイルメック/ワルム/オルム/キチ・アトハシス/ストールワーム/ペイスト/ミズガルズオルム/ラムトンのワーム/リンドオルム/リントンのウォード・ワーム/レイドリー・ワーム/ローズリー・ワーム

ワイルド・マンWild Man

●中世ヨーロッパの「野蛮人」
ワイルド・マンはフランスの中世伝承に登場する「野蛮人」の名前です。
その名の通り、自然の中に生き、手には「野生」の象徴である棍棒を持ち、全身は毛むくじゃらです。

フランス語ではオム・ソバージュHomme sauvage、イタリア語ではウォーモ・セルバティコUomo selvatico、ドイツ語ではヴィルダー・マンWilder Mannと呼ばれますが、意味は「野生の人びと」で共通しています。

とある伝承によれば、深い森の中に棲み、人語を解さず、毛深く、怪力を持つとされています。
一説には、アジア・アフリカに棲む類人猿の存在が曲解されてヨーロッパに伝わったものだと言われていますが、キリスト教外の人びとを象徴するものだとする研究者もいるようです。

ワイルド・マンの存在は中世を通じて人びとの人口に膾炙(かいしゃ)し、宮廷ではワイルド・マンの格好をした人間が参加者を驚かす趣向が凝らされました。
さらに、ドイツやスイスなどでは、祭の仮装行列の中にワイルド・マンの格好をした人間がまぎれ込むことがあり、今でもバーゼルの祭などでは、行列の中にワイルド・マンの存在を認めることができます。

中世の紋章や寓意図にもワイルド・マンは登場し、特に盾を支えるワイルド・マンの紋章は「友軍」の象徴として認識されていたようです。



●亜種・別名など
オム・ソバージュ/ウォーモ・セルバティコ/ヴィルダー・マン

ワーウルフWerewolf/ライカンスロープLycanthropy

●オオカミ人間
ワーウルフはヨーロッパの伝承に登場する怪物の名前です。「ワーウルフ」という名前を知らなくても、「オオカミ男」という名前を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。

ワーウルフはその名から連想されるように、「オオカミに変身する」能力の持ち主で、中世を通じて広くその実在が信じられた存在のひとつです。
普段は人間として暮らしていますが、夜になると突然ケモノに変身し、人びとを襲います。「ワーウルフ」の名は古代ゲルマン語で「人」を意味するWerazと、「オオカミ」を意味するWulfがくっついたもので、そのまま「人狼(じんろう)」を意味します。
「ライカンスロープLycanthropy」の名で呼ばれることもありますが、これはギリシア語で「オオカミ人間」を意味する言葉から来ています。

その原型については、ギリシア神話において、ゼウスにオオカミへと変えられたリュカオン王に求める向きもありますが、民間伝承の中に定着したのは12~13世紀ごろと言われ、数ある「怪物」の中では比較的新参の位置に属します。

オオカミ憑きについては、1世紀ごろのローマの著述家プリニウスの「博物誌」にも登場しますが、彼はこの存在を「呪い」の一種とみなし、信ずるに値しないものとして一蹴しています。


●変身する人間
人間がケモノに変身するという伝説は世界中に散在し、日本でも「狐憑き」の例が知られていますが、ヨーロッパではもっぱらオオカミに変身するのが一般的だったようです。

変身には2種類あり、ひとつは完全にオオカミの姿になってしまうというもの、もうひとつはオオカミのように毛むくじゃらになるというものです。
いずれの場合も、人間としての理性は失われ、凶暴化し、人びとを襲います。

また、ワーウルフに傷つけられた者が、新たなワーウルフになるという伝説も広く信じられ、人びとはこの怪物をひどく恐れました。

恐らくは、オオカミや野犬から移される「狂犬病」の伝承が、何らかの形を経てワーウルフ伝説へと昇華したのでしょう。凶暴化、伝染性という部分は、狂犬病の症状・性質と一致するからです。

中世以降、ヨーロッパを中心として魔女裁判が行われたことはよく知られていますが、その際に、ワーウルフもキリスト教にあだなす存在として、裁判の俎上にしばしばのぼったと言います。


●現代の人狼たち
人間が怪物に変身するというモチーフは、現代になっても脈々と映画や漫画・小説の中で受けつがれ、さまざまな作品を生み出してきました。
とりわけ近年は、「凶暴化する」という部分が取り除かれ、人間と獣の良いところを取った作品・イラストなどが目立ちます。
モチーフの美しさもさることながら、狂犬病の脅威が去り、オオカミ人間の実際的な「怖さ」が薄れてきたのも、理由のひとつでしょう。

また、ゲームなどの影響から、「ワーベア(熊人間)」「ワーキャット(猫人間)」などのバリエーションが生まれました。最初から獣と人間がくっついたデミヒューマン(半人間)的なものも一般化しつつあります。



●亜種・別名など
ワーベア(熊人間)/ワーキャット(猫人間)/ワータイガー(虎人間)/ライカンスロープ

ヴイーヴルVouivre

●半人半竜の怪物
ヴイーヴル(ウイヴル、ウィーヴル)は上半身が豊満な体つきの女性、下半身が翼の生えたドラゴンという姿の怪物です。
炎の身体で表現される場合もあり、主にフランスの城跡や修道院跡などに棲み、財宝を守護しています。

目はルビーかガーネット、もしくはダイヤモンドでできていると言われ、その光で闇の中を飛び回ります。これらの宝石は取り外すことができ、川で水を飲む時や寝る時には外して脇に置きます。
この宝石を人間に取られてしまうと、目が見えなくなるとも、死んでしまうとも言われています。


●フランス版ワイバーン
ヴイーヴルの伝承は、主にフランス各地に残っていますが、ドイツやスイスでもヴイーヴルに似た話を聞くことができます。いずれの地でも、雄はおらず、雌だけで構成されているとされています。

教会装飾として彫られることもあり、フランスの修道院の中には、柱頭にこの怪物があしらわれているものが散見されます。恐らくはガーゴイルのような効果を狙ったものではないでしょうか。

一説には、ヴイーヴルはイギリスのワイバーンと同じものであるとも言われています。実際、フランス中部の都市ヌーベルでは、ヴイーヴルはワイバーンと同じものとして扱われました。

この怪物は紋章にもあしらわれることがあり、その場合は上半身だけを外に出した子供をくわえ、身体をくねらせたフォルムで描かれます。
そのため、同じ半人半竜の怪物メリュジーヌと同一視されることもありました。「母性」の象徴と考えられることもあったようです。



●亜種・別名など
ウイヴル/ウィーヴル

ヴァンパイアVampire

●吸血する怪物
恐らく、怪物に興味のある人でヴァンパイア(吸血鬼)を知らないという人はほとんどいないのではないでしょうか。

生物から血や精気を吸い、自らの生きる糧とする怪物たち。ドラキュラ伯爵をはじめとして、彼らを題材にした作品も厖大な数に上り、最も多く映画化された怪物が、実は吸血鬼なのだそうです。

怪物としてのイメージも強烈この上なく、生きている人間に「吸血鬼!」と言えば、それは貧しい人間から財産を容赦なく巻き上げる血も涙もない極悪人のようなことを表わします。

こうした認識が成り立つのも、私たちが持つ血液というモノが、生きる上で欠かすことのできない要素だからであるに他なりません。
どんな頑丈な人でも、大量に流出させてしまえば生き続けることは難しいでしょう。必須ゆえに神聖と考えられ、それゆえ神々の供物として積極的に捧げられてきた経緯がありました。


●血液と怪物
昔の人々は、血液の中に「生きるみなもと」みたいなものがあると考えておりました。
死体はこの「みなもと」を失ったから生きていないのであり、それゆえ悪霊や死霊といった「死にきれない」連中は、この「みなもと」を生きた人間から奪うことでその生を長らえます。

今ほど怪物に対する認識の強くなかった時代、「怪物」と言えばすなわち「吸血鬼」のことでもありました。吸血鬼ではない、普通の怪物であっても、例えば人間の肉を喰らう、人間の血を啜ると言ったような食人鬼、吸血鬼の要素を持ったものは多いのです。
アラビアのグールも日本の河童も、かつては血を吸うものだと考えられ、恐れられたものです。


●吸血鬼の歴史

「血を吸う怪物」というイメージがいつから存在し、どのようなルーツを持ち、いかなる人々が考え出したのかについては分かっていません。あまりに古すぎて、起源を遡ることができないのです。

ただ、先史時代、動物と直に格闘していたころから、血を奪い、啜る相手が恐ろしいものであるという認識はあったでしょうし、また、実際にそのような場面(もちろん怪物ではなく、実在の動物が死体をあさるような場面)に出会うことも多かったはずです。
その意味では、吸血鬼の歴史は人間の歴史にそのまま重なると言うことができそうです。

吸血鬼が実在の動物と切り離されて考えられるようになったのはおよそ5000年前のことだと言われ、当時の壺絵に、吸血鬼のような怪物が人間を襲う場面が描かれたものがあります。

ギリシア神話には、厳密に言えば吸血鬼ではありませんが、血を飲むことで一時的に生を授かると言う話が収められています。

トロイア戦争の英雄として名高いオデュッセウス。ご存知「オデュッセイア(オデッセイ)」の主人公ですが、冒険の途中で冥界を訪れたとき、彼はふとエルベーノールという人物に出会います。
オデュッセウスの部下だったのですが、ある時酒に酔って屋根から墜ち、背骨を折って死んでしまいました。しかし、いろいろ心残りがあったので、オデュッセウスに頼んで「黒い牡牛と牝牛の血」を飲ませてもらい、一時的に生き返ることができたそうです。

詩人ホメロスの「イーリアス」にも、やはり死者の血を吸う「ケール」という怪物が登場します。ケールは透明な姿をしており、翼を持ち、死者を引きずって辺りを彷徨います。
そして、血に染まった赤い衣を持ち、目を光らせ、哀れな犠牲者に牙を突き立てるのです。


●吸血鬼を表す言葉

ヨーロッパで吸血鬼を表す言葉は多く、ざっと見ただけでも「ヴァンパイアVampire」「ストリゴイStrigoi」「モロイMoroi」「ヴコドラクVukodlak」などが使用されています。

このうち、最も有名なのは何と言っても「ヴァンパイアVampire」ですが、これほど一般に知られているにもかかわらず、どのような語源から来ているのか分かっておりません。
有力なところとしては、スラブ語の「飛ぶ者」を意味するウプィリUpyr'、カザン語(タタール語)の「悪霊」を意味するウブルUbyr、トルコ語の「魔女」を意味するウベールUber、セルビアの語の「飛ばない人」を意味するVampir、ポーランド語の「翼ある亡霊」を意味するUpior、などの言葉が語源と考えられています。

「ストリゴイStrigoi」はローマの怪鳥ストリクスStrixに由来するものです。さらに遡れば「音を立てる、羽ばたく」を意味するラテン語ストリデレstridereに行き着きます。ストリクスは、普段は老婆の姿をしておりますが、しばしば鳥に変身して子供を襲います。

「モロイMoroi」はスラブ語の夢魔(ナイトメア)を意味するモーラMoraに由来します。モーラは人間にのしかかりその精気を吸います。後世のインキュバス(男夢魔)、サッキュバス(女夢魔)の原型となったことは間違いありません。

「ヴコドラクVukodlak」はバルカン半島の言葉で「狼の毛」を表す言葉が由来で、「人狼(ワーウルフ)」と意味合いとしては一緒です。


●蘇生する死体たち

吸血鬼の伝説は世界中に散在しますし、日本にも似たようなものはいくつかありますが、ただ、人間のようなものが彷徨い、血を吸って歩く……といった伝承に限って言えば、そのほとんどは中近東、すなわち東欧やアラブなどに集中しています。
かの有名な「吸血鬼ドラキュラ」も、東欧の伝承をモチーフにした物語です。

この地域では、しばしば死んだハズの人間が蘇り、人間や家畜を襲う例が報告されていました。
彼らの復活を防ぐには、口に大量のコインを詰めたり、太い木を囓らせたりするか、もしくは白い杭や太い針を胸に突き刺しておく必要があります。他にも、煮立った油を棺に注いだり、死体を切り刻んだり、足を釘で固定するなどの方法が考えられました。

こうした荒唐無稽な方法が考案され、実行された背景には、当時の死亡確認が非常におざなりなレベルであったことが影響しています。特に黒死病(ペスト)発生時には、連鎖罹患を防ぐためにそれをより進める必要がありました。

死者が本当に「死んで」いればいいのですけど、息や心臓が止まっているだけで、本人はまだ辛うじて生きているというパターンも少なからずありました。
そこで、ここで挙げた「復活防止」の方法を実行することで、生きた人間に「トドメ」を刺し、死者が再び起きあがって来ないようにしたのです。

しばしば言われる「吸血鬼は流れる水を渡れない」というのも、蘇生した人間は、非常に憔悴しきっているので、大変な体力を必要とされる渡河を行えない、という部分から来るものです。
当時の墓場は、敷地的な問題から、しばしば村はずれの川の中州などに作られていました。

実際に本人は死んでいたとしても、湿度や気温の関係で死体の腐敗速度がきわめて遅くなる場合もあります。

特に湿度の低いヨーロッパやアラブなどではその傾向が強かったことでしょう。
体内は完全に腐りきっているのですが、皮膚までそれが及ばないため、腐敗ガスが体内に膨満し、肌は(腐敗熱で)ピンク色、皮膚は(膨満しきっているので)ツヤツヤ。
その姿を見た人が、迂闊に「まだ生きている!」と思い込んだ例もたぶんにあったのではないでしょうか。実際、吸血鬼と目された死体に杭を刺したとたん、急激に(ガスが抜けて)萎んでいったという例もいくつか報告されています。


●吸血鬼伝説の誕生

意外と、吸血鬼伝説の発祥も、生きた人間を「死んだ!」と思い込んだところから来ているのかも知れません。

もしも人間が、生きていることを知らずに埋葬されてしまったらどうなるでしょうか。まず十中十までパニックに陥ります。陥らないハズがありません。
冷静になって状況を把握できたとしても、このままでは本当に死んでしまうので、何とか棺から這い出そうと、もがき、叫び、蓋を叩き続けます。
そうこうしているうちに生爪は剥がれ、口は噛みしめたせいで血だらけ、皮膚はすり切れ、顔色は恐怖と酸欠で真っ青。

運良く外へ出られたとしても、墓場の多くは村の中心部から離れた場所にありましたから、まずはゆかりのある人間を捜して村まで彷徨うことになります。
そんな姿を、知っている人間が見つけたらもう大変。「死体が蘇った!」とパニック。双方でまともな意思の疎通が行われるはずもなく、あるいは蘇った側が、「よくも自分を勝手に埋葬したな!」と憤慨して「生きた住民」に襲いかかる。住民は武器で応戦する……。

かくて吸血鬼という怪物が誕生するというわけです。


●吸血鬼とキリスト教

ヨーロッパで吸血鬼伝説が盛んに語り継がれた背景には、キリスト教会自身がこの怪物を信徒確保のために積極的に利用したと言う事情も影響しています。
この怪物を不信心のあらわれと考え、「吸血鬼になるのは信仰心が足りなかったのだ!」あるいは「洗礼を受けなかったせいだ!」と決めつけたのです。

聖なる教えに帰依せよ、さすれば吸血鬼の恐怖から逃れることができる、というわけです。
当時、一部のアウトロー(ロマ族など)や知識人を除けば、まともな埋葬技術を持っているのが教会だけだったと言う事情も関係しているかも知れません。


●吸血鬼のイメージ

吸血鬼と言えば、夜会服のような服装に青白い顔、美男長身で威厳があり、口からは大きな牙が覗いていて、鏡に映らず、ニンニクと太陽、そして十字架や聖水のようなホリー・アイテム(聖なる道具)に弱い……というイメージが一般的です。

これはその多くが、アイルランドの作家ブラム・ストーカーによる「吸血鬼ドラキュラ」によって確立されたものです。

むろん、彼以前に吸血鬼を題材にした作家がいなかったわけではありません。
「ドラキュラ」が書かれる遙か以前に、ゲーテが「コリントの花嫁」と言う吸血鬼小説を書いてますし、他にもジョン・ポリドリの「吸血鬼」、シェリダン・レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」、トマス・プレストの「吸血鬼ヴァーニー」などの作品があります。しかし、これらの作品は吸血鬼のイメージを固定するまでには至りませんでした。

もうひとつ、私たちのイメージ形成に作用したという部分で言えば、ホラー映画の金字塔として名高い「魔人ドラキュラ(ベラ・ルゴシ主演)」、「吸血鬼ドラキュラ(クリストファー・リー主演)」といった作品を挙げないわけにはいきません。
当世を代表する美形俳優によって演じられたドラキュラの姿は、吸血鬼=美形のイメージを形成するのに充分な役割を果たしました。

実は、ストーカーの原作ではドラキュラ伯爵は単なる「気味の悪い男」であり、どこにも「美形」とは書かれていないのです。


●ドラキュラと呼ばれた男

ところで、ドラキュラと言う名前はどこから来たのでしょうか。これは由来がはっきりしています。

15世紀半ばごろに活躍したワラキア大公(今のルーマニア南部の支配者)だったヴラドという人物がいて、彼が政敵に「ドラキュラ」と呼ばれていたのです。
ドラキュラとは「小さな龍」「小龍公」を意味する言葉で、同じく威名の高かった父ヴラド・ドラクル(大龍公ヴラド)になぞらえて、「ドラクラ(ドラキュラ)」と呼ばれるようになりました。ドラゴンのドラと語源は同じです。

歴史的に見ると、この「ドラキュラ」は「ツェペシュ(串刺し公)」なる名前でも呼ばれ、何万人もの捕虜や敵を串刺し刑に処しています(串刺し刑は当時の東欧ではごく一般的な処刑法)。

これだけ見るとかなり残虐な印象のある人物ですが、忠実な者や能力のある者には相応の評価を与え、勇敢な者には寛大な態度でのぞんだと言いますから、厳しくはあるけれど総じて「名君」と呼ばれるに相応しい人物ではあったようです。

ゆえに、今もルーマニア国内における「ドラキュラ」ことヴラド公の人気はきわめて高く、国民は怪物のドラキュラを求めてやってくる観光客を苦々しい思いで見つめていると言います。


●エンターテイメント作品に見るドラキュラ

小説や漫画に出てくる吸血鬼像は、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」に出てくるものを原型に、それぞれの作者なりのアレンジが加えられたものになっています。
作品によって超強力だったり、再生能力を持っていたり、惰弱だったりと多少の違いはあるものの、吸血能力を持ち、変身し、空を飛び、そしていくつかの致命的な弱点を持っているということでは共通しています。

吸血鬼の弱点として一般的に考えられるのは、次の7つです。

1.鏡に映らない
2.ニンニクに弱い
3.十字架・聖餅(せいべい)・聖水に弱い
4.流水を渡ることができない
5.日光に弱い
6.入って良いとの許可がない限り家には入れない。が、一旦許可を得れば自由に出入りすることができる。
7.白木の杭で胸を刺されると復活できない

他の怪物に較べかなり多い感じですが、これは吸血鬼が時代を経るごとにますますその「怪物ぶり」を上げていったので、多少弱いところを作らないとバランスが取れないと言うところから来るのでしょう。

ちなみに、ストーカーの原作を見ると、ドラキュラ伯爵が十字架を手でもてあそんだり、窓越しに夕陽を見つめるシーンが出てきます。



●亜種・別名など

吸血鬼/吸血伯爵/ドラキュラ/ヴラド(ドラキュラの本名)/ダンピール(ハーフ・ヴァンパイア)/ドラクラ/ドラクール/カーミラ(女ヴァンパイア)/ノスフェラトゥ/ストリゴイ/モロイ/ヴァーニー

ユニコーンUnicorn

●聖なる一角獣
ユニコーンは「一本(ユニ)の角(コーン)」を意味する言葉で、主に大きな一本の角を持つ動物・幻獣を差す総称です。「一角獣」の名前で呼ばれることもあります。

人魚(マーメイド)と並んで近年までその実在が信じられた動物で、つい最近まで、「ユニコーンの角」と称するものが店先に並べられたこともありました。

ユニコーンの姿については、いろんな伝承によってさまざまなかたちが伝えられていますが、有名なのは馬のようなユニコーンでしょう。

美しい毛並みと凛々しい表情をそなえ、頭の中央に、まるで槍のような立派な角を生やしています。性格は高邁で、孤高を保ち、人間たちを嫌って普段は森の奥に潜んでいます。
ただ、処女に対してだけは心を許すと言われていて、無垢な乙女がユニコーンとくつろぐ姿は、しばしば絵画のモチーフにもなっています。


●ユニコーンの起源
ユニコーンが初めて文献に表れたのは、古代ギリシアの歴史家クテシアスの「インド誌」であると言われています。
その中に、「胴全体が白く、頭は緋色、目は紺色で額に長い角を生やしたロバ」に関する記述があります。アリストテレスはそこからこの動物を「インドロバ」と呼びました。実際はサイや水牛などを描写したものではないかと考えられています。

古代ローマの博物学者プリニウスもこの幻獣の存在を信じていて、著書「博物誌」の中で次のように紹介しています。

「最も獰猛な動物は一角獣(ユニコーン)で、これは胴体は馬に似ているが、頭は牡鹿、足は象、尾は猪に近い。
太い唸り声をあげ、一本の黒い角が額の真ん中から2キュービット(約1メートル)突き出している。この動物を生け捕りにするのは不可能だといわれる」


●ユニコーンの正体
これらの「一角獣」が何を表しているのかについては、昔から論議の的になってきました。
サイであるという説、牛を横から見ただけという説、「2本角」という言葉を間違って「1本角」に訳してしまったという説……。

中世になるとしばしばヨーロッパに「ユニコーンの角」と称するものが持ち込まれて、高値で取り引きされました。
その正体はサイの角を切り取ったものであったり、あるいは北氷洋に棲息するイッカク(イッカククジラ)の角であった可能性が高いようです。

特にイッカクの角は長くねじれていて立派だったため、人気がありました。
ちなみに言うと、イッカクの角は、厳密に言えば本物の角(頭蓋骨や頭皮が角質化したもの)ではなく、門歯(前歯)が頭の皮膚を突き破って前方に張り出したものです。


●ユニコーンの伝承
一般に通用しているユニコーン=馬というイメージは、結構後の時代になって固まったものです。それまでは、さまざまな動物のタイプの「ユニコーン」が存在しておりました。
ラバや象であるとする人もいましたし、山羊に似た動物であるとする人もいます。プリニウスの「博物誌」では、さきの記述にもあるように、さまざまな動物の集まったキメラ(キマイラ)だとしています。

動物に関する話を集めた中世の「フィシオロゴス(動物寓話譚)」は「一角獣は小さい動物で、子山羊くらいだが途方もない勇気の持ち主であり、ひどく力があるため、狩人も近づくことができない」と述べています。

また、中世の伝承によれば、彼らはきわめて誇り高いので、人間に飼われることをよしとしないと言います。
追い込まれると崖の上から身を投げてでも逃げようとしますし(その際、角をうまく使ってショックを和らげます)、万が一捕らえられても、悲しみのあまりすぐに死んでしまいます。

そんなユニコーンを唯一、捕らえる方法があるのをご存知でしょうか。
美しく装った処女を用意して、彼女を野原にひとりで残すと、森の奧からユニコーンがやってきて、処女に寄り添います。そして、しばらくすると処女の膝の上に頭を載せて眠り込むので、その隙に捕まえるのです。

ただ、その処女が偽物、つまり非処女であることが分かった場合は、激しく怒り狂い、その女性を八つ裂きにして殺してしまうそうです。


●ユニコーンの角
古くからユニコーンの角は解毒の特効薬として認識されてきました。
ユニコーンを紹介したクテシアスは、その角に限りない薬効があることを認めていて、「インド人は毒を注ぐとたちまちに割れる酒杯をユニコーンの角で造っていて、これを使用している者は決して痙攣(けいれん)や癲癇(てんかん)になることはない」と著書「インド誌」の中で述べています。

フランス王シャルル9世やベリー公ジャンなどは毒殺を防ぐために、杯の中にユニコーンの角を入れることを奨励しました。また、有名なサンドニ大寺院の井戸にはこの角が浸されており、ゆえにその水は病人を治す力があると信じられたそうです。

「フィシオロゴス(動物寓意譚)」の中にも、こうしたユニコーンの角に関する話が所収されています。
動物たちが水を飲みに来ようとすると、どこからか蛇がやってきて水の中に毒をまき散らします。しかし、ユニコーンがひとたび角で十字を切れば、水は完全に浄化され、再び飲めるようになるのだそうです。


●ユニコーンの象徴するもの
ユニコーンは姿の美しさから、古今さまざまな国や個人の紋章として使われました。
特に有名なのはスコットランド王国でありましょう。ゆえに、今のイギリスの紋章には、イングランド王国のライオンと並んで、スコットランドのユニコーンの姿が描かれています。
また、スコットランド王の居城として使われたエディンバラ城には、現在もユニコーンの紋章が燦然と翻っています。

キリスト教では処女にのみ心を許すという伝説から純潔性、処女性を象徴すると考えられ、時にイエス・キリスト自身を表すこともありました。
また、純潔を守り、ひとり孤独な生活を強いられることから「修道院の生活」を象徴することもあるようです。

また、勇気・威厳・高貴などさまざまな性質を併せ持つと言うことで、「絶対専制君主制」の象徴と考える人もいます。



●亜種・別名など
モノケロス(ラテン語)/ウォーター・ユニコーン(水棲ユニコーン)

タラスクTarasque

●南仏のドラゴン
タラスク(タラスクス)は南仏の古都・タラスコンの町に棲んでいたと言われるドラゴンの名前です。
レヴィアタン(リヴァイアサン)そのもの、あるいはその子供と言われ、相手は牛の化け物のボナコンともロバともいう説があって、はっきりしていません。

亀の甲羅に鋭い背びれ、山猫の上半身、六本の足にドラゴンの身体というキマイラ(複合動物)であり、その姿はいかにも恐ろしげです。

この怪物は、実際にタラスコンの「タラスク祭」でその姿を見ることができます。タラスクに見立てた巨大な張り子を作り、聖マルタに扮した少女がそのヒモの先端を持って歩く祭です。


●聖マルタと怪物タラスク
この怪物は主に聖マルタとの関わり合いで出てきます。

紀元40年ごろ、一艘の船がローヌ河の河口のサント=マリ=ド=ラ=メールに漂着します。船には『復活のラザロ』ほかふたりの姉妹が乗っていました。
その姉妹のひとり、聖マルタは陸に上がると、河口付近にあるタラスコンの町まで歩を進め、その地を布教の本拠地として選びます。

ところが、この町は当時、ローヌ河に棲むタラスクというドラゴンが荒らし回っていました。そこで聖マルタは、タラスクのところへ乗り込むと、イエスの名を3回唱えて馴化(じゅんか)させ、退治しました(聖水と十字架で抑えつけたという説もあり)。

それを記念して、タラスクを引き回す祭が行われるようになったということです。


●タラスクのルーツ
タラスクのルーツは、紀元前にこの地を拠点としていたリグリア人(ケルト人の一系統)の考案した怪物が元となっていると言われています。

それが何故、キリスト教の聖女に退治されるようになったのかについては、6世紀以降に南仏でキリスト教、特に聖マルタ信仰が広まるにつれて、土着宗教の象徴であったタラスク伝承を、キリスト教の象徴であった聖マルタ伝説が呑み込んでいったという説が有力です。

ちなみに、タラスク祭自体は15世紀に始められたとされ、およそ6世紀の歴史を誇る長い祭で、外国からも多くの参加者が集まるという話です。



●亜種・別名など
タラスクス

セイレンSeiren

●歌う怪物
セイレン(セイレーン)は旧約聖書外典「エノク書」、およびギリシア・ローマ神話に登場する、半人半獣のかたちをした怪物です。
けたたましい音を立てる「サイレン」の語源としても知られます。

セイレンという名前は、「ひもで縛る」あるいは「干上がる」を意味する言葉seirazeinに由来すると言われています。綴りは通常知られるSeirenのほか、Sireen、Sirene、Syreneなどがあります。

一説にはバビロニア神話に起源を持つと言われ、旧約聖書外典「エノク書」では、堕天使に仕え、特に男たちを快楽に引きずり込む魔性の存在として描かれます。

彼女たちはその美しい歌声で船乗りを惑わし、生きた人間を殺して食う存在として知られました。周りには彼女たちに食われた人間の遺体や骨が山積みになっていたとも言います。

一説には、セイレンは天国と地獄の間をさまよう罪深い死者の魂であり、生者の国からも死者の国からも隔てられていると考えられたため、絶海の孤島に棲んでいるのだとされています。


●ギリシア・ローマ神話のセイレン
セイレンはホメロスの「オデュッセイア」およびオウィディウスの「変身物語」に登場し、エノク書と同じく、船乗りを歌で惑わし、その肉を食らう存在として描かれます。

ホメロスの「オデュッセイア」によれば、オデュッセウスたちがポリュペモスの島を離れ、魔女キルケーの島に立ち寄って、彼女に歓待され、しばらく後に島を離れようとした時のこと。キルケーは「この先に3種類の怪物あるいは魔女がいる」とオデュッセウスに教えます。「スキュラ」「カリュブディス」、そして「セイレン」です。

特にセイレンは、歌で船乗りたちを惑わして座礁させるため、絶対に近づいてはならない、そして彼女らの歌を聴いてはならない、とキルケーは彼に伝えます。そのためには、耳にロウを詰めるといい、と対処法を教えるのです。

セイレンの島に近づいた時、船乗りたちは温めた蜜蜂ロウを耳に入れてふさぎ、彼女の歌を聴かないようにします。オデュッセウスはと言えば、彼女の歌がどのようなものなのか聴いてみたいため、自分を帆柱に縛り付けさせます。

自分の歌を聴いているはずなのに、一向に近づいてこない船を怪訝に思い、セイレンたちはオデュッセウスに話しかけます。オデュッセウスはたちまち魅惑され、縄を解いてひとり近づこうと試みます。

ところが、彼の部下であるペリメデスとエイリュロコスがしっかりと縄を縛り直したため、船は無事にセイレンの島を通過してしまいました。それをセイレンたちは悔しがり、海に身を投げてしまいます。


●アルゴ探検隊とセイレン
ホメロスはまた、オデュッセウスよりも先にこの海域を通過した一行のことについて触れています。その一行とは、有名なアルゴ探検隊のことです。

彼らは耳をふさぐ代わりに、ケンタウロス族の長老ケイローンの予言に従って乗船させたトラキアの詩人、オルフェウスに琴をかき鳴らさせ、セイレンたちの歌を圧倒します。
ひとり、アテナイの養蜂家プーテスを除いて全員が正気に返り、プーテスも美と愛の女神アプロディテに助けられたため、一行は誰も欠けることなく、その海を無事に過ぎたということです。

この時も、セイレンたちは誇りを打ち砕かれて、海に身を投げてしまいます。


●中世のセイレン
ギリシア彫刻におけるセイレンは、一般にとがった乳房に水かきのある足、羽のある尾を持った姿で描かれます。また、古代ギリシアの人びとは、彼女たちを単なる怪物ではなく、熱病の権化として認識していました。

紀元前2世紀のギリシアの学者アポロドーロスは、セイレンを3人の乙女と位置づけ、ひとりは竪琴を鳴らし、ひとりは歌い、ひとりは笛を吹いたとしています。

中世のベストセラーとして名高い「フィシオロゴス(動物寓意譚)」にもセイレンは登場しています。
そこではセイレンは「鳥女」と表現され、ケンタウロスと並んで「異教」を象徴する存在として描かれました。「人間と動物のどちらにも属する者は、キリスト教と異教の双方を信じている者に似ている」という理由からです。

ロマネスク美術の時代(11~12世紀頃)に入ると、彼女たちは「美女」から「醜悪な怪物」として描かれるようになり、しばしば「死」のメタファー(隠喩)として描かれました。墓標にセイレンの似姿が彫られることもあったということです。


●人魚としてのセイレン
私たちがいま知る「鳥の羽が生えた人魚」みたいなセイレンの姿が定着するのは、13世紀ごろと言われています。
一説には、ギリシア語で「羽」を意味する言葉pennisと、「ひれ」を意味する言葉pinnisが似ていたため、羽の生えた人魚という姿が生まれたのではないかとも言われています。

中世の旅行家たちは「海でセイレンに出会った」という話をこぞって書き残しました。

二叉の尾ひれを持つセイレンも頻繁に描かれました。
その姿はしばしば建築物や家具、チーズのモチーフとして使われ、現在でも、コーヒーチェーン店(スターバックス)のマークに、二叉の尾を持つ人魚の姿が用いられています。



●亜種・別名など
セイレーン/セイレーネス(セイレーンたち)/アルクオペメ/テルクシーペイ/パルテノペ/ピノシエ/リギア/レウコシア

シーホース(海馬)Seahorse

●海神を曳く馬
シーホース(海馬)は、ギリシア語でヒッポカンプス(海の怪物の馬)とも呼ばれます。
この怪物は、古代メソポタミアやギリシア、インドなど、馬が存在した文明には必ずと言っていいほど登場する存在で、その姿も馬そのものとか、魚の尾が生えた馬などとか、千差万別です。

ギリシア神話では、魚の尾の生えた馬であるとし、ポセイドンの馬車を曳く存在として登場します。
最初は神々の乗り物としての役割を果たしたものの、後年になると人を襲う、邪悪な存在として描かれるようになります。


●海馬の目撃例
スイスの博物学者コンラート・ゲスナーのように、「シーホースなど神話時代の動物だ」と切り捨てる向きがあったことは事実ですが、しばしば、旅行記などに「シーホースを見た」という目撃例が現れたのもまた事実です。

博物学者オラウス・マグヌスは「北方民族文化誌」の中で、ブリタニア(ブリテン島)とノルウェーの間に登場するシーホースを紹介しています。
それによれば、「馬のような頭を持ち、馬のようにいななくが、足と蹄(ひづめ)は牛のようであり、魚のように二叉に分かれた尾を持っている」という姿をしているそうです。

また、陸でも海でも、しばしば餌を求めて出現することがあるということですが、捕まえられることは滅多にない、ともされています。


●「千夜一夜物語」のシーホース
千夜一夜物語の「シンドバッドの冒険」には、シーホースの話が出てきます。
それによれば、毎月新月の夜に、まだ牡馬と交わったことのない牝馬を海岸に繋いでおくと、シーホースがその匂いをかぎつけてやってくるというというのです。

このシーホースが牝馬と交わると、地上ではひと目することのできない立派な馬が生まれるとされています。


●ヨーロッパの紋章
ヨーロッパの紋章には、このシーホースがしばしばモチーフとして用いられました。
しかし、その姿は神話時代のものとはかけ離れており、馬の頭と胴体は一緒ですが、魚の背びれに煮たたてがみ、水かきのついた前足、魚の尾びれを持ち、中にはトビウオのような翼が生えているものもあると言います。



●亜種・別名など
ヒッポカンプス/ヒッポカムプス